竜宮小町のあずさ動画を妄想してみる | トカチP アイマス動画日記

トカチP アイマス動画日記

ニコニコでトカチPという名前でアイマス動画をうpしています。

お盆は暇です。
暇ついでに思いつくままあずささん動画のプロットを書いてみました。
そろそろアイマス3の情報も出てきそうな時期に、
竜宮小町で動画を作るという気にはとてもならないのですけど、
竜宮小町のメンバーをメインにした空色デイズみたいなものを作ると
したらどうしようなんてことをよく考えていたので形にしておきます。
文章については厳しい物があるので
こんな動画があると思って補完していただけるとありがたいです(汗)





ミーティングルームで律子とプロデューサーが何やら話している。
きっと私達のことだ……。大事なフェスだったのに。

アイドルアカデミー大賞。

その年のNo1アイドルを決める賞。
アイドルになったものは皆アイドルアカデミー大賞を目指し
そして一握りのトップアイドル中のトップアイドルだけが栄誉を授かる事ができる。
アイドルアカデミー大賞には1年間でCD売上20組のアイドルまでしか
エントリー出来ないため、まずは年間チャート20位を目指す必要があった。
私達の曲「SmokeyThrill」は現時点で76位。
とても、アイドルアカデミー大賞が狙える位置ではない。
一発逆転を狙って大きなフェスに参加したのだが、
人気の961プロの新人の男性アイドルと同時刻のステージだった
ため、客席も空席が目立ち、宣伝効果の見込めるステージではなかった。
「はぁ……」
思わずため息が漏れる。
パフォーマンスは完璧だっただけに修正点も見つからない。
例え、ステージを完璧にこなしたとしても、必ずしも数字には
反映されないシビアな世界というのは分かっていたけれど、
それにしても報われない。
一緒に頑張ってきた仲間達、水瀬伊織、双海亜美、そしてプロデューサーの
秋月律子の浮かない顔が次々と浮かぶ。
「あまり落ち込まないでください、あずささん……」
話が終わったのかプロデューサーがいつの間にかこちらにやって来た。
「あの、、、プロデューサーさん、私、、、」
「今はゆっくり休んでください。心も体も」
プロデューサーといっても、私達のプロデューサーではない。
彼は同じプロダクションのアイドルをプロデュースしているプロデューサーだった。
今日ステージが終わってからずっと考えていたことが口をついてでる。

「……私、区切りがついたら、アイドル辞めようかと思ってるんです」

「これ以上皆さんの足を引っ張るわけにはいきませんので……」
「そうですか……」
そうプロデューサーは答えるとじっと黙ってしまった。
それまでずっと俯いたままだったが、反応が気になって
Pの顔を見上げた。
きっと私は慰めて貰いたかったのだろう。
きっと私は心地の良い言葉を返して欲しかったのだ
しかし、プロデューサーは唇を噛み締め肩を震わせていた。
「がっかりさせないでください」
「え……あの」
突然の厳しい一言に絶句した。
「……ごめんなさい」
どうして、私は駄目なんだろう。
関係のないプロデューサーさんのやる気を削ぐようなことまで言ってしまった。
プロデューサーはぐちゃぐちゃと頭を掻きむしる。
「すみません、今日はもう帰ります。
 あずささんも今日はもう帰った方が……」
プロデューサーは声を振り絞るとそう言い残して、事務所の奥へ消えていった。
いつものプロデューサーとは明らかに様子が違っていた。
それでも、明日からまたいつも通り同じ事務所の仲間として
仕事をすることになるのだろう。
その時は、そう思っていた。


次の日からプロデューサーは二度と765プロには現れなかった。
「私のせいなんです」
「私が、がっかりさせるようなことを言ってしまったから」
「それはないですよ、あずささん」
律子が答える。
「そもそも、プロデューサーはあずささんの担当じゃないじゃないですか」
「んも~、プロデューサーったら自分の担当アイドルほっぽり出して何やってるのかしら」
何故かそうは思えなかった。
「あずささん、今日はもう帰って休んでください。明日から切り替えて頑張りましょう」
「でも」
「問題ないですよ。私がスケジュールやりくりしておきますから」
と、白紙の予定表を見ながら律子。
その日のアイドル活動は終了した。





休みになったからといって、あずさは外出する気にもならなかった。
悶々といろいろな思いが湧き上がってくる。
私はやっぱりアイドルに向いてない。
いつも、皆についていくだけで精一杯だった。
私が一番年上なのに、何も出来なかった。
どうして私はアイドルなんかになろうとしたのだろう。
もう、どうでもよかった。
でも……。
頑張って報われなかった皆のあんな顔二度と見たくない。
私に出来る事はもっとあったんじゃないか……。
「がっかりさせないでください」
プロデューサーの声が頭の中を駆け巡る。
後悔の波に飲み込まれながらあずさは眠りについた。





翌日、いつもの通り765プロへ。
「律子さん、、、おはようございます」
「あ、全員揃ったわね、皆ちょっと集まって」
ぞろぞろと765プロメンバーが律子の元へ集まる。
「えーと、重大発表があります」
「新しいユニットの企画が通りました」
「メンバーは、伊織、亜美、あずさで、ユニット名は竜宮小町!」
おおと驚いたような声が上がる。

-やっぱり何かおかしい

まるで今から竜宮小町の活動がスタートするようだった。
「あの、えーと、律子さん……」
「冗談ですよね?」
「いえ、大真面目です。あずささん期待してますよ!」
と律子はまくしたてる。
「そうじゃなくて、、あの」
と言いかけてあずさは口をつぐんだ。
自分以外、全員律子の竜宮小町の話を冗談か何かだと思ってるような
節はない。

それに……

あずさは髪に手をやり改めて感触を確かめた。
いつの間にか髪が伸びていたのだ。
というより当時の髪型に戻っていたというべきか。
「いえ、何も……」
「あずささん、やってくれますよね?」
「ええ……」
律子のうれしそうな顔を見ていると断りきれなかった。
最初に竜宮小町の話を聞いた時もこんな会話だったような。
何故自分を律子が選んだのか今でも分からない。





竜宮小町として初めてのレッスンが始まる。
私にとっては初めてではない。
「はい、じゃ、今のところやってみて」
私はダンスは得意ではなかった。
が、もうこの曲は何度も練習して体が勝手に動いてしまう。
「すごいじゃないですか!あずささん」
「え、あ」
「最初から完璧です。それにアレンジもいいです!」
そうだった、このダンスは最初の頃と違っていくつかアレンジが
入ったものだった。
歌の面でもあずさは最初から抜きん出ていた。
律子達もあずさに引っ張られ練習に力が入る。
でも、あずさは知っていた。

-このままじゃ駄目なんだ。




今日もレッスンの日々。
合間を見つけては、あずさはノートに何事かを書いていた。
「熱心ですね。あずささん」
「あ、いえ……」
「メモを取ることは大事ですよね。私も見習らおうと思って」
「じゃーん」
律子がノートを取り出す。表紙には竜宮小町必勝ノートとある。
可愛い魚のイラスト付きだ。
「あら、おさかなさん可愛いですね」
「えへへ、絵にはちょっと自信が……」
「じゃなくて、これから私も竜宮小町について気づいたことをメモしておこうと思って」
「いつか役に立つこともあるんじゃないかなと思うんです」
こんなに一生懸命私達のことを考えてくれているんだと思うと
頭が上がらない。
でも、あの敗北の事を思い出してしまう。
私も出来る事をやってみよう。
みんなのために。





1stシングル「SmokeyThrill」もそこそこ売れて軌道にのってきた頃、
そこには、懐かしいプロデューサーの顔があった。
別れ際の悲しそうだったプロデューサーは今はない。
伊織が何やらこっぴどく喚き散らして、
新人プロデューサーはひどく困った顔をしていた。
「あらあら、伊織ちゃん、どうかしたの?そんなに大きな声を出して~」
そうそう初めての出会いはこんな感じだった。
「安心してくださいね、うちはとてもいい事務所ですから……」
「は……はい」
思わず吹き出しそうになるのを堪えてやり取りを続けていく。
そうしてひと通り会話を終えたところで
「私、頑張りますので。一緒にまた頑張りましょうね」
と付け加えた。
「はい、負けませんよ!」
そう言って、プロデューサーは嬉しそうに笑った。





風が気持ちいい。
あずさは公園のベンチに座りながらぼんやりと風景を眺めていた。
ここだけ時間がゆっくりと流れているようで、日々の忙しさから
解放される気がしていた。
あずさは、ノートを広げる。
スケジュールの合間は大抵こうしていた。
それからどのくらい時間がたったのか。
ふと人の気配がすることに気づいて目をやると……
「ええ!?」
驚いて思わず大きな声が出てしまった。
「やっと気づきましたか?なんか一生懸命で声をかけづらくって」
プロデューサーだった。
「あずささん、何やってたんですか?」
「ええと、実は作詞をしてみようと思って。でもなかなかうまくいかなくって」
「仕事のことなら律子に聞いてみたらどうです?」
「いえ、律子さんには内緒なんです」
「……」
「作詞ですか、難しいですよね」
そういって少しプロデューサーは考える素振りをして
「僕も作詞なんてしたことないんですけど……」
「ありのまま思ってることを詩にしてみたらどうでしょうか?」
「ありのまま……ですか?」
「ええ、格好いいことを書こうと思っても書けませんからね。
 普段から強く思ってることをそのままでいいと思いますよ」
「強く思ってること……」
「……」
「そうですね、例えば僕だと……」
プロデューサーの表情が一瞬だけ少し変わった気がした。
しかし、一瞬だけでプロデューサーはにこりと笑って話を続けた。
「世界のどこかに運命の人がいるって僕は思うんです」
「運命の人にただただ幸せであって欲しい。僕はそんなことばかり考えてます」
「そうですか……」
妙な感覚がした。
「あの、わたし」
「あ、いえやっぱり変ですよね。分かってます」
「きっとあずささんにも、何か1つくらいあるんじゃないですか?」
「……」
「それじゃ、ミーティングなので行きますね。頑張ってください」
この感じはなんだろう。
何故かとても懐かしい気がした。





それ以来あずさは毎夜同じ夢を見るようになった。
竜宮小町としてではなく、ソロでアイドル活動をする夢。
トップアイドルのまま、ラストコンサートを行い、
そしてプロデューサーに思いを告げる。
いつも隣にいてくれたプロデューサーの顔ははっきりとは
分からない。
そして決まってプロデューサーはその後姿を消してしまう。
そう、今回と同じように。
いつもそこで夢は終わり。
何故か涙が溢れて止まらない。
毎晩の出来事だった。
わたしの強く思ってること……。
もしも、運命の人と出会い離れ離れになったとしたら
わたしは何を思うのだろう。





「うーん、伸び悩んできてるわね」
売上チャートを見ながら律子がぶつぶつと呟いている。
最初の時と比べて多少はセールスも伸びてはいたが、
それでも10位程度伸びたくらいで、まだまだ上位は遠かった。
「2曲目をリリースするにしてももうお金ないしなぁ……」
金銭的に765プロが厳しいのは知っていた。
半年間全員プロデューサーもつけずに活動していたため
資金がつきかけていてもう、手が打てないのだ。
そして、新ユニットのナムコエンジェルに残り資金を
全力投入しておりもう765プロに2つのアイドルユニットを
支える力はなかった。

-やっぱりこのままではいけない

「あのお話が」
「私、歌いたい曲があるんです」
「え……あ……でも」
「あの、この曲なんですが……」
と、準備していた音源を聞かせる。
半年前あずさのアイドルデビュー当時コンペでボツになっていた曲に
あずさ自身が自作の歌詞をつけ仮歌を乗せた音源だった。
「私なぜかこの曲が気になってて……」
「お願いします」
「そこまでいうのなら……」
律子は仕方なくといった感じでヘッドホンをあずさから受け取り、
しばらく聞いていた。
「この曲……」
だんだんと表情が変わっていく。
そして、真剣な顔をしてあずさに言った。
「……わかりました、この曲をなんとか竜宮小町で歌えるように
してみます」
「お金は……」
「大丈夫、とは言いがたいけど、こんな音源聞かされたらいてもたっても
いられませんよ」
「それに……、いつもノートに向かってたのはこのためなんですよね」
律子はにっこりとあずさに微笑むと、すぐさま社長室へと向かっていった。





なんとか新曲が完成したものの、それからの日々は
竜宮小町のメンバーにとっては苦労の連続だった。
連日、アイドル活動の合間にレッスンをこなし、
時には夜中までレッスンをすることもあった。
「……ほんと、律子ったら。もう少し手加減してもよさそうなのに!」
「ごめんなさいね。私が我儘言ったばかりに」
レッスンの休憩中、タオルで汗を拭いながらぶつくさと文句を言っている
伊織に声をかける。
「……これだけは言っておくわ。あずさ」
「そのすぐに謝る癖直さないと怒るわよ?」
「ごめ…」
「もー、また謝ろうとする!」
「あのね、私達はもうあずさの我儘にすがるしかないの」
「奇跡でも起きない限りアイドルアカデミー賞に届かないことは分かってたもの」
「伊織ちゃん……」
「だから、謝らないで。むしろ感謝してるんだからっ!」
伊織の一言で涙が溢れる。
「だーっ!もう泣かないでよ。こっちまで泣けてくるじゃないの!」
……ありがとう伊織ちゃん。
少しだけ私の我儘に付合ってください。





765プロからボーカルレッスン場までは電車で一駅。
いつものように歩いて皆で駅へと歩いていると、
「ねぇねぇ、あずさお姉ちゃん」
亜美に声をかけられた。
「亜美ね、今回の新曲どうやって歌っていいかさっぱりなんだけど、
 どうすればいいかな」
「あのね、いつももっとちょーハイテンションな曲ばっかりで
 いぇーいって感じで歌ってればよかったんだけど……」
「亜美でも分かるよ。それじゃ、なんか違うって気がするんだよね」
「亜美ちゃん……」
「そうね、もし真美ちゃんがどこか遠いところへいってしまった
 ことを想像してみたらいいんじゃないかしら」
「おやつもゲームも独り占めできるけど、遊び相手がいなくなるのは困る!」
「亜美ちゃんらしいわね」
とにっこり笑うと
「もう二度と真美ちゃんに会えないとしたら悲しくなるでしょ?」
「うあうあー、そんなの嫌だよぉ」
「そういう気持ちを大好きな人に伝える感じで歌えばいいんじゃないかしら」
「真美に?」
「そうそう、真美ちゃんいかないでーって」
「ええ、でもこれって兄(C)とあずさお姉ちゃんのことじゃないの?」
「え、あの、えーと」
あずさは、亜美の核心をつく質問に少し戸惑いながら答えた。
「亜美ちゃんは、男の人にそういう気持ちになったことはある?」
「んとね、兄ちゃんいなくなったら亜美もやだよ」
「だって、真美もだけど、兄ちゃんもいつも遊んでくれるもん」
「じゃ、プロデューサーさんがいなくなってしまった時のことを思い浮かべながら
歌ってみて」
「うーん、わかったようなわからないような感じだけどやってみる」
「大丈夫、亜美ちゃんなら出来るから」
にっこりと笑う。
亜美も真剣に今回の曲に向き合ってくれている。
少し亜美にとっては難しい曲かもしれないけど、聡い子なので心配はしていない。
亜美もきっと恋をする。
きっとその時に初めてこの曲の意味が分かることになるのだろう。
そう考えるとちょっぴり嬉しい気持ちになると同時に寂しい気持ちも湧き上がる。
あずさはそんな事を考えながら、ぴょんぴょんと跳ねるように歩く亜美の手を握った。





「みんなー話があるからちょっときてー」
事務所に律子の大きな声が響く。
竜宮小町の3人が揃うと
「ビッグニュースよ。一週間後のフェスに急遽参戦できることになったの」
「おーこれで亜美達も一発逆転出来るかも」
亜美が嬉しそうに言った。
しかし、あずさは知っていた。このフェスで私達は負けてしまうのだ。
「それでね。秘策があるの」
律子は続ける。
「前から練習してた新曲をこの日に思い切って使いましょう」
「いいですか?あずささん」
「ええ、私はいいのですが……」
「あずさ!」
間髪入れずに伊織が口をはさむ。
「もちろん、いいに決まってるでしょ。もうSmokyTrillではジリ貧なのは
分かってるし、それに……」
「そうね。伊織から提案があって竜宮小町のこれからのリリース曲は、
曲ごとにセンターを変えようと思うの」
「おお、じゃ次はあずさ姉ちゃんが真ん中ってこと?」
「ええ、来週のフェスはあずさがセンターでいきます」
「じゃあ、次は亜美の番?」
「まだ曲が決まってないけど、そうなるわね」
「ま、亜美の件はその時がきたらってことでまずは目先のフェスね」
「あずささん、覚悟は出来てる?」
あずさは、少し間をおいてから言う。
「私、今回は負けたくないです」
「律子さん、竜宮小町を勝たせて下さいお願いします」
律子はあずさの熱に押されつつも望むところといった顔で
「それじゃ、これから一週間みっちりしごくわよ」
「えー」
「文句言わないの亜美」
「ほーい」」
「じゃミーティング終わり、早速レッスンしましょ」
「えー」
「文句言わないの、亜美。ほら、あずさもぼーっとしてないで行くわよ」
そんなやりとりを眺めながら、あずさは改めてこの人達が
仲間でよかったと思った。





そして……運命の日。
竜宮小町の運命の日。

「続いては竜宮小町!」

ステージのセンターには三浦あずさが立っていた。
脇を水瀬伊織、双海亜美が固める。
あずさは深くお辞儀をすると歓声がどっと湧く。
あずさの長い髪がはらりと流れる。
最初この舞台に立った時の髪はショートだったが髪は今は長いままだ。
あずさは歓声にも動じず、マイクへ手をやると、
すっと背筋を伸ばし、口を開く。
と、同時に歓声も止んだ。

そしてイントロが流れる。
「聞いてください。曲は」

(クリックしてください)

……私は、もう一度会いたかったんだ。
いつも、あの人は私の前から消えてしまった。
ずっと、ずっともう一度会いたいと思っていた。
そして、折角出会えたのに私は全て忘れてしまっていた。
でも、いつもあの人は側にいてくれたんだ。
私のことをずっと見守っていてくれた。
どんどん記憶が蘇ってくる。
初めての出会い。
バスに酔ってしまった私の背中をずっとさすっていてくれたこと。
一緒に部屋でお祝いしたこと。
様々な思い出が駆け巡り、歌に力を与える。
歌声は観客を魅了しいつしか、誰もが涙を浮かべていた。





ステージ後見事勝利した竜宮小町を律子とプロデューサーが迎える。
プロデューサーはただただ泣きじゃくって喜んでいた。
「よかった。本当によかった……」
そうだ。
夢じゃなかったんだ。
私はこの人を知っている。
今ならはっきり分かる。
この人は私のプロデューサーだった人。
私の運命の人。
もう止められなかった。
私はプロデューサーに抱きついていた。
涙が溢れて止まらない。
どうして忘れていたのだろう。
こんなに近くにいたのに、こんなにも遠かった。

「……プロデューサーさんもう私を私達を置き去りにしないで」

あずさはそう言うと、プロデューサーを抱きしめた。





あずさのこの台詞で動画は終わっていた。
しかし、その瞬間文字の波が画面を覆う。
「心配かけたね。もう離れたりしない」
「ずっと見守っていくから」
「あずさ、結婚しよう」
画面の右から左へ文字が流れていく。
いくつものプロデューサー達のコメントの波が駆け抜けていく。





あの時から彼女の笑顔は曇ったまま。
彼女を笑顔にするためには……。
僕は毎日そんなことをずっと考えていた。
そして、せめて自分の世界だけでも彼女を幸せにしてあげたいと思った。
とてもささやかだけど、僕が彼女にしてあげられるただ1つだけのことだった。

もう一度あの歌を歌って欲しい。

ずっと寝る間も惜しんでPCへ向かい続けた。
少しずつだけど前へ進み続けた。
そして。
ほんのちょっぴりだけど前へ、未来へと進めたような気がした。



おしまい


(あとがき)
二次創作にはありがちな設定ですけど、やっぱり時間巻き戻りは
竜宮のストーリーでやってみたかったです。
あずささんに関しては、竜宮小町の呪縛と、もう一つ、
隣に…もっと言ってしまうと3A07の呪縛もあるんじゃないかと思います。
歌詞解釈にはいろいろあって、何も3A07のように悲劇的な解釈しか出来ない
曲ではないと私は思います。
だから、隣に…で超絶ハッピーエンドを作ってみたかったです。
ただの天邪鬼なのかもですけどね(笑)
オチはいつもの感じです。
あくまで救うのはプロデューサー(画面の前のあなた)だと思います。