子供の春休みで、私の実家に戻っている際、親が借りている図書館の本の中から読みました。両親は、今野敏のファンなのですが、二人とも、途中で挫折したとのことでした。今野敏さんは警察小説の大家です。

 この本は、江戸時代末期から明治時代にかけての日本数学者海軍軍人・財務官僚である小野友五郎を中心とした話です。

 小野友五郎を、実務家と定義し、その立場から物語を紡いています。

 私自身、どちらかというと、実務家に分類される人間であると思っているので、その視点は興味深いものでした。

 

 しかしながら、読み進めていくうちに、人物評が偏っていないか、という気持ちを持ってしまいました。

 誤解があるかもしれませんが、今作上でのキャラクターの私の印象です。

 勝海舟は、自分を演出することしか考えていない政治家。

 福沢諭吉は、西洋を礼賛し、それをもって名を上げようとする軽薄な人物。

 薩長は、尊王攘夷という正義を盾に、私利私欲のために活動する、軽挙な輩。

 坂本龍馬は、イギリスとグラバーの手先。

 

 一方的、一面的にとらえすぎではないかという印象を受けました。

 例えば、福沢諭吉は、確かに若いころ、野心や軽薄なところがあったという印象は、福翁自伝を読むと受けますが、彼が「西洋事情」で、当時の日本に個別の制度等を紹介していたことは、虚業という訳ではないでしょう。

 もちろん、それを個々の実務において、実現した人がいた。もっとライトを当てるべき人がいるということもわかります。

 

 筆者の見解には、同意する部分も多々ありますが、一方で、善でも悪でもなく、優劣でもなく、もっと割り切れない人間を描いた小説が読みたいなぁと思いました。

 

 心に残った言葉は、以下の通りです。

・あなたの海軍士官、あるいは航海士としての経験に対しては尊敬の念を抱きます。しかし、それと計算結果は関係ありません。計算は海軍の経験と関係ないのです。

・年上だの、年下だのはこの際どうでもいいことだろうと、友五郎は思う。船という限られた空間には、限られた人材しかいない。だから、それぞれができることを精いっぱいやらなければならない。

・そう。おしなべてこの世は足し算です。異国の文化が面白ければ、それを取り入れればいい。そのときに、日本古来の文化を切り捨てる必要はないのです。

・世の中の基本は足し算だと思います。船の建造がそうでしょう。一気に大きなものを作ろうとしても無理です。小さな部品を足し上げていけば、結果的に大きな船になるのです。

・どんな仕事も、目の前にある小さなことの積み重ねでしかない。