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【アスピリン喘息】とその周辺見識

2007-08-17 17:17:30 | 健康・病気

アスピリン喘息に関しては何かと混乱があり、ネット上でも誤解を返って広めてるケースまであります。可能な限り正確で、最新の知識をお伝えしようと思います。

軽いところからはじめると、名前から。
【アスピリン喘息(AIA:アスピリン誘導喘息)】が通り名なのは、最初に診断されたのがアスピリン(「バファリン」や市販の風邪薬)内服後の喘息発作だったからで、その後NSAID(エヌセードと読む:non-steroidal anti-inflamatory drug)=非ステロイド系抗炎症剤全般にその可能性があることがわかってきたのですが、【非ステロイド系抗炎症剤(誘導)喘息】とか【解熱鎮痛剤誘導喘息】という呼び方は実際に近いのですが、長ったらしいのと、アスピリン喘息が既に定着してるために、そのままになってるようです。

うっかり名前につられて、アスピリンでなければ大丈夫などと思い込まないでください。
NSAIDは酸性解熱鎮痛剤と括ることも多く、ボルタレン、ロキソニンなど病院でもらう薬の代表です。アセトアミノフェン(「カロナール」)もこの仲間ですが、後で述べますが覚えておくべき薬です。
対極に塩基性のものでソランタールを代表にするグループがありますが、10年前アスピリン喘息の正体がつかめないものだから、あちこちで喘息のある患者さんすべてから解熱鎮痛剤を奪い去る事態があったとき、これは大丈夫という触れ込みでしたが、副作用は出ませんでしたが、何と効果もなし。熱は下がらんし、痛みは止まない。ボツ。

少し戻して、ご存じない方のために。
何が起きるのかというと、アスピリンに類する薬を内服(外用:湿布も)して5分~1時間くらいの間に、急激で、重い喘息発作を経験する。全喘息患者の10%といわれる
これは【アレルギー反応】ではありません。ここを勘違いしたネット発信者(医師も)が目に付きます。その情報全体の信用度ががた落ちかと。
初回からはげしく起きること、服用した量が多いほど重症になることなど、いかにもアレルギー反応とは趣を異にします。小生は、違いを際立たせるように「トキシックToxic毒性」という表現を好んでます。厳密ではありませんが。
この勘違いは、鼻炎との関連から、うっかりアレルギー鼻炎の連想もありそうです。(当初機序がわからなかったときに、真っ先にアレルギーだろうと皆が思ったのもありますが。)
よくある勘違いの例題にしたいくらいのハマリです。
アスピリン喘息の予見の知識として、慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎(特に鼻ポリープ)をもった方がなりやすいということで、統計的根拠もそろってるため、しっかり広まってるのです。
これは大事な情報で、小生も喘息の方で、NSAIDの安全な使用歴がない、【慢性】鼻炎がらみのだとアセトアミノフェン少量からにします。

どんな風になってるか、少しややこしい話です。
炎症に関する細胞レベルの話で、アラキドン酸経路というのがあって、これはPGプロスタグランジンとロイコトリエンを作り出します。そこにNSAIDは作用してPGを押さえ込んで痛みを抑えたり、熱中枢への作用をもたらしますが、そのせいで余った材料・エネルギーがロイコトリエンの方に流れ込んでしまう。抗ロイコトリエン(シングレアなど)が今注目の喘息治療薬なのはご存知でしょうが、そのとおりで、作用を阻害されてる【ロイコトリエン】は気管支の炎症を含む喘息発作の悪化をもたらすものなのです。

このテーマは枝分かれがおおくて、まるで脳神経の網の目のように話が、捕捉が必要なものでまとめるのに苦労します。わかりにくい文章になって申し訳ない。何がリスク、どうすれば防げる(だろう)を語ります。

喘息の診断がついて以降慢性化してる状態で、たまたまロキソニンとかを飲んでなんともなかった方。99%次も大丈夫でしょう。
似てるが異なる、ロキソニンつかったのは喘息の診断前で、後は未経験の方は、安全度が不明なままと心得てください。
その時は、今現在、慢性の鼻の症状があれば特に警戒が必要。
最新の情報では、アセトアミノフェン(カロナール)が300mg(←修正)までならよさそうということ。風邪のPLだと150mg(+サリチルアミド)なのでそれなり。この辺はその場の医師の判断にも寄るでしょう。湿布のほうでも唯一サリチル酸メチル(MS冷シップ)が使える可能性があります。

アスピリン喘息には1)NSAIDのほかに、2)各種合成物・果実、3)水溶性ステロイド(コハク酸)に交叉過敏性(←化学式や立体構造が似ても似つかないのに、同じような症状がでてしまう)があり、またややこしくなります。2)の代表は黄色4号という入浴剤などの染料、タールから作る。パラベンという防腐剤(石油由来で注射剤に)、ミント、パーマ液、香水なども。他は検索してみてください。一言添えると、逆にそのさらされやすい環境で何事もなくすごしてるのなら、可能性が低いと解釈できます。

水溶性ステロイドは、頭の痛い問題です。何セ良かれと思って発作に点滴したら逆にもっとひどくなるのが現実に起きますから。知らない医師が多いのも困る。
ステロイドそのものではないために・証拠に、吸入、内服では問題なし。
水溶性を持たすためのコハク酸エステル部分(サクシゾン=ソル・コーテフや、ソル・メドロール)に、交叉過敏性があるらしく、症状をみて点滴中止が用件。もちろん事前に、本人・家族からアスピリン喘息の事実・気配がないことを確かめとくのが先。
アミノフィリンだけの力では及ばないときは、リン酸エステル型のリンデロン。効果が遅いのは甘受。デカドロンは同類だが、不運なことに、パラベンが入ってるらしく数例が悪化した事例あり、現在は準禁忌てきな扱い。

まだ研究途上の疾患のひとつです。現場の混乱も多くなりがちです。あいまいな情報に振り回されないように。アセトアミノフェンの有用性、点滴時のステロイド適否など治療を提供するための知識を語ってるものを良しとしましょう。(「あれもしない、これもしない」は医療側の保身がつよく、患者側にとって不在・障壁