2018年12月の<神崎寺>で

「どうにも気が乗らないナ」的な記述をしました。我ながら挑発的な書きっぷり。だけど、そう思っちゃったのだからしょうがない。
 一方、なぜそう思ったのか、当の本人にも皆目見当がつかず、原因究明は先送りに。

 あれから一年以上経ち、違和感の正体がみえてきました。どうやら、『神崎寺問題』の原因は屋根にあったようです。そして、問題点を浮かび上がらせるには、お寺と神社の屋根を比較するのが良いみたい。

 この“寺社の屋根比較”の気付きを与えてくれたのが、2019年2月に取り上げた<助川鹿嶋神社

です。記事のそっけなさから、当時のやっつけ感が滲み出ちゃってる(汗

 でも、こういうのを巡り合わせというのでしょうねぇ。「向拝が軽快」との直感的印象は伊達じゃなく、後に何度も画像を見返すように。いつしか、助川鹿嶋神社は『神崎寺問題』を考える上で格好の“軸足”になっていました。

 加えて、ロゴ



のお洒落さにヤラれて、大好きな神社の一つに! ということで、お寺と神社の屋根を
 1.部材
 2.形状
 3.大きさ
の三つの観点から見比べることにより、『神崎寺問題』の原因に迫りたいと思います。

 って書くと「よくあるヤツやん!」って思う事でしょう。そりゃそうだ。「お寺 神社 違い」で検索すると、わんさかコンテンツが出てきますもの。でもご安心ください。

 既存コンテンツとの重複は極わずか。また、項番2と3に関しては、この切り口で寺社建築を読み解く“初物”のネット記事になろうかと。(寺社建築施工会社による関係者御用達の記事は除く)

 なお、わたくしの分析は、サンプル数が限られる上、地域性に依存するところ極めて大。特に、西日本の方には説得力に欠けるかもしれませんが、あしからずご了承ください。

 それでは参ります。

1.部材の違い
 茅葺き・檜皮葺きを除くと、寺社の屋根材は瓦と銅板に二分されます。そして、寺には瓦が、神社には銅板が使われるケースが多い。ここまでは、よくある話し。重要なのは、この先。

 瓦と銅板で、屋根の単位面積あたりの容積を比較すると、瓦の方が嵩が大きくなるのは自明。これにより、
「瓦葺き(≒寺)の屋根は重厚に、銅板葺き(≒神社)の屋根は軽快に見える」
の仮説が浮上。ちなみに、実重量で比較しても、銅板葺きの方が軽量に仕上げられるので、耐震性が向上するとのこと。

 だがしかし、瓦葺き=寺=重厚、銅板葺き=神社=軽快と結論付けるのは早計。瓦葺きの神社や、銅板葺きのお寺だってありますから。
 また、一口に銅板葺きといっても、<筑波山神社>

にみられるような“本瓦棒葺き”で仕上げると、瓦葺きに勝るとも劣らない重厚感が出ます。この様な「銅板で瓦葺きに匹敵する質感を出す技巧」は、知らぬ間に(?)進化を遂げており、<トリーデなると>は

 画像は鳴門市のHPから引用
こう見えて銅板葺きなんですって! ここまで来ると、実物を触るまで瓦葺きと思っちゃいそう。いや、触っても分からないかも…。

 助川鹿嶋神社に立ち返って、同社の葺き方を調べてみると「一文字葺き」という工法のようです。よし、仮説の「銅板葺き」のところに手を加えて、
「瓦葺き(≒寺)の屋根は重厚に、銅板の一文字葺き(≒神社)の屋根は軽快に見える」
に変更。これで幾分、仮説の精度が上がればしめたもの。

2.形状の違い
 わたくしの生活圏の神社では、向拝の上=入母屋の平側に千鳥破風が設けられているケースがほとんど。前出の<助川鹿嶋神社>、<筑波山神社>はじめ、

 静神社@那珂市


 豊受皇大神宮@東海村


 水戸東照宮@水戸市


 有賀神社@水戸市

などなど。神社といえば、これがデフォルト。

 一方、お寺はというと、平側の装飾は控えめ。変化といえば、流れ向拝の部分の軒がちょっと伸びてるか

 普門寺@常陸太田市


 常福寺@那珂市


 引接寺@那珂市

唐破風になっている

 久昌寺@常陸太田市
くらい。

 以上を踏まえて一般化すると、
「変化がある神社 vs. 平板なお寺」
という対立軸を見い出せそう。

 ただ、この見立ても、例外が多々あって、単体で『神崎寺問題』を看破するには弱い。下は例外の好例で、

 千福寺@日立市
お寺だけど、千鳥破風がビタっと配されています。ちなみに、本瓦棒葺きですネ。

 さらに強烈な反証があります。それは、神社の「流造」(Wikipedia)。流造は、全国で最も多い神社本殿形式だそうで、平側の構成は

 園城寺新羅善神堂(滋賀県) 画像はWikipediaから引用
お寺さん的簡明さ。ただ不思議なもので、流造を目にしても、お寺のような重々しさを感じないのです。少なくともわたしは。

2/2へつづく