私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

息子が生まれ、やがて自閉症と診断されてから、はじめはなんとか治す方法はないかとむさぼるように読み、やがてようやく障害を受け容れ、これからは自閉症のままで幸せに生きていく道を探しながら・・・これまで巡りあった本の数々です。


後に続く方が、書店で手に取ってみたときの参考材料の一つにでもなれば、そんな思いで紹介します。著者名での検索は、右のテーマ欄から探してみてください。

書名別検索は『書名順索引』 からどうぞ。


今息子哲平が就労して、安定して暮らしているのも、これらの本からいただいたたくさんのアドバイスのおかげも少なからずあったと思っています。

『 私の歩んだ 児童精神医学の道 』

門 眞一郎:著  星和書店  定価:2700円+税 (2025.10)


             私のお薦め度:★★★★☆

これまで育てる会で講演会や連続講座などで大変お世話になっています門 眞一郎 先生の最新刊です。 
と、言ってもこれまでの先生の著書や訳書とはひと味違って、書名からお分かりのように門先生が歩まれてこられた「児童精神医学」の足跡を巡る一冊です。
ですから、今月はいつもの自閉症児の子育てへの参考にしてほしいノウハウや対応法の“お薦め本”というよりも、代表の今月の巻頭文と同じく、私の読書感想文、読んで良かった私のお薦め本となっていますのでよろしくお願いします。

私が今まで読んできた偉人の伝記や自伝などは、何かを成し遂げるために、コツコツと、あるいは波瀾万丈に努力してきた、そんな物語がほとんどで、それが故に感銘をいただいていたように思います。
目の前の高い山の頂上を目指して、凡人の私には手の届かないような足取りで登っていくクライマーみたいな姿ですね。一筋の道をひたすらたどる修験者か仙人さんみたいな感じです。
でも、本書の門先生の歩んでいる姿はちょっと違っています。

まずは、門先生が“この指とまれ”と唱えられた、本書の冒頭の「自閉スペクトラム医師宣言」を紹介します。

ここに一つの宣言文がある。医師による宣言、それも発達障害を診る精神科医師による宣言、しかも自分も自閉スペクトラム上にあると認識している精神科医師による宣言である。

自閉スベクトラム医師宣言(Declaration as a Doctor on the Autism Spectrum:DDAS)
私たちは、この宣言を発表する自分自身が自閉スペクトラム(以下AS)の特性を有しており、AS上にいるすべての人々と連帯することを誇りに思います。私たちの目標は、AS上にいる人たちが、適切に理解され、必要な支援を受け、その個性を自由に発揮し、充実した生活を築くことができるようになることです。
私たちは、自らの経験を通じて、ASが少数派の単なる特性であり、その特性に対する多数派からの誤解や偏見が、本来の個性や能力を阻害してしまうことを痛感しています。そのために、私たちは自分たちの経験を活かし、AS上にいるすべての人々と連帯し、その声を強く反映させることを約束します。 (以下略)


そんな、ASと自ら宣言された先生、やはり先着1名様(脳ミソのキャパは先着1名様で全画面表示! :ニキ リンコ)の特性をお持ちなのか、本書でも各章ごとにその折々、取り組まれるテーマが次々と変わっていかれます。
不登校への対応から児童虐待、薬物療法批判、TEACCHプログラムの話から現在のPECS、そして西陣麦酒まで・・・いわば、生涯をかけて高い山に登ろうとするのがこれまでの伝記だとすると、本書は目指す山の頂に達する度に、次に登る山、登らなければならない山が見つかり、山の稜線を歩いていくような、そんな一冊だと思いました。
どの山一つをとっても、私などではたどり着けない頂上なのですが、先生はあっさりと次のテーマを見つけ、それを極めていかれます。

もちろん門先生にとっても険しい山もあります。
薬物療法について書かれた章などその最たるものでしょう。

児童精神医療の分野で使用される薬は、厳密に考えればそのほとんどが実験的な使用なのである。治療薬であれ検査薬であれ、そうなのだ。つまり、これらの薬を投与するということは、治療的な人体実験、もしくは非治療的な人体実験ということになる。そうすると人体実験としてのしかるべき倫理基準に則して行われなければならないが、その点が私には甚だ疑間に思えた。1985年当時、子どもに使用された薬の効果について報告された論文をいくつか読み、薬の実験的使用に関する手続きについての当時の指針や倫理原則を参照してみたところ、我が国の児童精神医療の悲惨さには改めて慄然たる思いを禁じ得なかった。

そんな門先生が、止むに止まれぬ義理から、日本児童青年精神医学会の第50回総会の総会長を引き受けざるをえなくなったそうですが、その時引き受ける条件として出されたのが、“開催にあたり製薬会社からの寄付は受けない、つまり参加費を値上げしてでも自前で総会を開催する”ということだったそうです。
期待と激励の声と同時に、やはり誹謗中傷にもあわれたそうですが、プログラムを充実させ史上最多の参加者で、製薬会社からの寄付を上回る額の剰余金まで確保されたとのことです。

余剰金が出たら開催地でのいろんな活動に使ってよいことになっていたのだが、そうはしなかった。次の総会も製薬企業からの寄付を受けずに開催できるようにと、学会に贈呈した。しかし、その願いは見事に打ち砕かれた。次の総会で、再び製薬企業からの寄付も無料の弁当も、あっけなく復活していた。もちろん、私も同僚もランチョン・セミナーは聴講したが、弁当は受け取らなかったことは言うまでもない。

いかにも門先生らしい、自閉スペクトラム医師宣言を唱えた医師らしい後日談で、笑っちゃいけないのですが思わず笑ってしまいました。そして、製薬会社と“ほど良い、いい関係”でつきあう、合わせていくのが非ASのえらいさん、学会の中枢部のお医者さんなんでしょうね。
いかに門先生といえ、一人でこの強固な関係を変革するのは困難だったのでしょうか、残念!


もっとも、ここで力を使い切るよりは、次の山の頂、PECSの日本での啓発に力を注いでいただいたおかげで、私たち親にとってはありがたかったと思えます。
・・・取り上げられた薬物療法については、みんなで少しずつでも声を挙げていきましょう。

また、本書は門先生の人となりを幾分かでもご存知の方にとってはほのぼのとして、心あたたまる一冊なのですが、もし門先生のご講義を受けたことのない方にとっても、各章ごとに含蓄ある言葉がちりばめられているのが本書となっています。万人にお薦めの一冊です。

たとえば、最初の頃、児童福祉センターでお仕事を始められた頃のテーマ “不登校”に対する門先生からの提案です。

したがって、子どもが本当に必要とするときに休みが取れる制度を設けることが、不登校を減らすうえで大きな力になるはずだと考えた。子どもだって疲れるときは疲れる。当たり前だ。だから、子どもにもいつでも取れる「年次休暇」を与えるべきなのだ。
疲れたときに休みを取ることができるということは、子どもにとっても非常に大事な権利だ。休息の権利は、「子どもの権利条約」の第31条に明記されている。その際重要なことは、休みを必要とするときにはいつでも自由に休めて、休むときに理由を言う必要がないということである。
だから、理由を言わなくても休暇が取れる年次休暇制度を設けるべきなのだ。


ここでも、「子どもは本来無給なのだから、ここでは「有給休暇」ではなく「年次休暇」と呼称すべきである・・・」なんて主張は、いかにも門先生らしい“こだわり”でクスッとしてしまいました。

一方で、同感できるグチも漏らされています。これは、2000年にロンドンで開かれたPECSのワークショップに参加された後のつぶやきです。

ところで、ワークショップ受講のために、はるばるロンドンまで大枚はたいて行ってきた以上、PECSを実践しないという選択肢はなかった。今では国内で、しかもオンラインで、ワークショップを受講することができるので、交通費や宿泊費がいらない。それでも受講費が高いとおっしゃって、特に特別支援学校の先生はなかなか受講してくださらない。京都や大阪から東京ディズニーランドに1泊2日で行く費用よりは安いと思うし、とても画期的な表出コミュニケーション支援のスキルを習得できることを考えると、一生の宝になるしプライスレスだと思うのだが。

そうですね。「近隣の講演会等の案内板」でも紹介していますが、普段行政開催の無料セミナーに慣れている学校の先生方には、2日間で、40,700円(保護者30,250円:税込)のPECSのワークショップレベル1の金額は高く感じられるのかもしれませんね。
しかも、学校からの補助もなく自前での参加となると・・・・先に書いた、お医者さんが学会におけるランチョンセミナーの無料弁当(製薬会社からの提供)に慣れてしまって、“当然”と思うところに似た感じなのでしょうかね。

そこで、ということで、実は来年度の即実践講座の講師を門先生にお願いしています。

年間10回の連続講座ですので、その中の表出コミュニケーションのところではPECSの有効性を、実践の様子も交えながら紹介していただきたいと思っています。
この連続講座でPECSについて知ってもらい、授業や療育に取り入れたいと思ったら、次はレベル1のワークショップを受講していただきたいと願っています。
また、これも「近隣の講演会等」に載せていますが、来年 令和8年1月16日(金)19:00~20:30には「PECSの概要」として、無料のセミナーがオンラインでありますので、興味のある方は“お試し”でいいので、ぜひ視聴してみてください・・・・と、お願いして、今月のお薦め本を終わらせていただきます。

                  (「育てる会会報 323号」(2025.12) より)

 

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目次

  プロローグ

第1章 大学入学まで

第2章 大学生時代

第3章 病院勤務医時代

第4章 英国にて ~留学とローナ・ウィング先生~

第5章 児童精神科医始めました

第6章 児童虐待、ADHD、自閉症をめぐって

第7章 自閉症と薬をめぐる問題

第8章 自閉症 ~治療から支援へ~

第9章 自閉症とPECS

第10章 取り残された人たち

第11章 デジタル・デバイド

第12章 退職後 ~西陣麦酒の誕生~

第13章 少数派と多数派

  エピローグ

『 重い自閉症の支援

       ~強度行動障害・問題行動への対応・予防~ 』


高橋みかわ:著  ぶどう社  定価:2200円+税 (2025.9)

 

          私のお薦め度:★★★☆☆
 
東日本大震災のあと、育てる会でお願いして、東北から岡山まで講演にきていただいたこともある高橋 みかわさんの近著です。
その時の演題は「大震災 その備えと生きのびるために ~自閉っこ家族のサバイバルスキル~」というテーマで、非常事態に陥ったときに、自閉症をもつ我が子と家族が、どのように生きのびるか、切り抜けるかというお話でしたが、本著では日々の普段の暮らしの中で、強度行動障害の状態にある子どもと、いかに安定した暮らしを維持していくかというお話です。

著者の高橋さんが、最初に書かれているように、高機能な自閉症の方の情報や接し方、本人の体験談などの本やセミナーはよく目にするようになりましたが、知的に重度の方の情報は少ないですね。

しかし模倣力がない重い知的障害、さらに自閉症の特性が強く、自傷や他害がある自閉症児者の情報は、あまり見ることがありません。彼らが大人になり、地域社会で生活し、親なきあとも穏やかに、彼ららしく社会で生活している姿を見たり、その姿をイメージすることもなかなかできません。
その原因の1つに、支援の難しさがあるのだと思います。
自閉症の特性が強ければ強いほど、模倣力が乏しく、知的障害が重ければ重いほど、支援は難しい。さらには、支援のわずかな手順やタイミングのちがいが、本人の混乱を招き、自傷や他害行動や、支援者が「困つた」と思う行動を起こします。支援1つで豹変します。
まさに支援は、「1人に1つ」です。だからこそ、支援者全員で本人の情報と支援を共有し、いつどこにいても同じように一貫性のある支援が必要なのだと思います。


そうですね。知的に重度であればあるほど、“その子”の状態は一人ひとり大きく違い、“その子”に合わせた支援が必要になってきます。 そして“その子”にぴったりの話はどの本にも載っていないので、支援を考えるのは親や周りの支援者の方・・・と言っても、周りの支援者は“今”の状態しか知らないので、・・・結局は親が工夫していくしかないのかも知れません。
幸いにして我が家は、重度の知的障害でありながらも、幼い頃からTEACCHで環境を整えることの大切さを教えていただいたおかげで(本人に模倣力だけはあったせいかも知れませんが)、強度行動障害までに陥ることはなかったのですが、当時の先輩のお兄さん方は、確かにすごかったですね。
最近の療育現場でASDの子どもたちに接していて感じるのは、高機能な子どもたちが増えてきたこともあるのでしょうが、「以前のような強者(つわもの)を見かけることが少なくなった」という印象です。これには手前味噌ですが、私たちの取り組んでいるTEACCHやESDM、PECSのようなエビデンスのある療育も寄与しているようにも思えるのですが・・・

・・・それはさておき、本書に戻って、高橋さんチの“きら”くん(本書ではそう呼ばれています)、昔からの強者に違いなく、そんなきらくんをパニックやかんしゃくに陥らせることなく、安定した状態が続くように、と、経験から編み出されたのが本書です。
もちろん、簡単にいくわけもなく、試行錯誤、悪戦苦闘の末に生み出された対応法です。

「トイレがシェルター」と聞いて、強度行動障害の状態にある人と生活する人は、大きくうなずく。「まずい!」と思ったら一目散にトイレに向かう、そしてきっちり鍵を開める。わが子が落ち着くまでひたすら息をひそめる。誰も助けに来てくれない。
トイレでじっくり考える。「ごめんね」「怖い思いさせちゃったね」「混乱させちゃったね」でも、痛い思いは嫌なのよ。わが子とはいえ、憤怒のあなたは怖いのよ。様子をうかがう、「もう出ても大丈夫?」、 トイレのドアを少し開けて様子を確認する。


ある日、中学生の次男坊(きらの弟)と私は些細なことで大声の言い合いに。私は、高ぶった気持ちのままについつい強めにきらに声をかけた。「きら! おふろ! 」
きらが、ばっと起き上がり鬼の形相で私の胸に頭突き1発。「痛い!」「今の音、折れたかな?」
2発目を狙うきら。私は、必死にトイレに逃げ込んだ。追いかけるきら。しばら<、唸りながら大きく息を吐きながら、トイレのドアを開けようとしたり、うろうろしたりする。怖い。そして痛い。
きらの動きが収まったところでトイレから出て、きらの見えないところに避難。しばら<すると、きらは(ごめんなさい)ポーズをしながらひたすら頭を下げる。悲しそうな、不安そうな顔。
私は、きらの頭突きで両鎖骨肋骨骨折。はたから見たら、けがをした私は被害者。でも、ちがう……きらは怖かったんだよね。怖くて、訳がわからなくて、混乱した。その原因は私。被害者はきら。


そんな高橋さん、まず始めたのが、きらくんからのサインを拾って、それをグリーン(良い)、イエロー(いつもの状態)、レッド(悪い)にゾーン分けして、パニックが起こる前に見つけること。そしてそれを文字にして支援者と共有しておくこと。これで「原因が分からず、突然パニックになる・・・」なんてことがずいぶん減るはずです。原因が分からない、と思うのは、サインを見落としているだけ・・・

そして、そのサインの出る原因を、自閉症自体の特性、重い知的障害からくるもの、そして周りと合わせる力の苦手さ、の3つの視点から分析することが必要だと言われています。

また、支援者間で支援の基準を一貫したものにするために、みんなで話し合ってそれぞれの場面での状態表を作っておくことも推奨されています。

対象を目、鼻息、声などの表情などや、歩行、食事、排便、手洗いなどの日常生活、拒否、要求、SOSなどのコミュニケーション、定同行動やこだわり、後頭部たたきなどの自閉傾向サインなどの項目別に、①落ち着いている状態、②少し崩れた状態、③大きく崩れた状態、④警戒警報の4区分に分類した表です。


本書では、例としてきらくんの状態表が4ページにわたり、57項目紹介されています。

各項目で4区分の記載ですから、状態の記載欄は200以上になります。

これを支援者の方々が複数人で話し合いながら作っていくのが支援を統一するための最良の道として、その会議のやり方までも具体的に紹介されていただいています。

 

されど、現実問題、昨今の人手不足の福祉現場でそんな時間を複数の支援者に求めるのは難しいかもしれませんね。実際に本書のきらくんの状態表も、お母さんの高橋さんが作って、支援者全員に共有してもらっているそうです。やはり最後はお母さんの出番でしょうか。

たとえば、“強いこだわり” や “常同行動の修正”を、きらくんの状態表から見つけたという例です。

きらのペツトボトルの飲み方の状態表

 

サイン:他人のペットボトルの残りを飲む

 

  落ち着いている状態

      支援者が側にいれば、長時間他人のものが置いてあっても飲まない。

  少し崩れた状態:

      目についただけでも飲もうとする。支援者の禁止の指示を守れる。

  大きく崩れた状態:

      左記(上記)状態が強く、支援者が側にいて「禁止」の指示が入っても、飲み干す。

  警戒警報発令:

      支援者が側にいても、「禁止」の指示が入らず、目に入った瞬間に飲み干す。

強いこだわり:表を見ると、「落ち着いている状態」のときでさえも、支援者が側にいないと長時間放置されていれば他人のヘットボトルでも飲み干してしまいます。
  →「ベットボトルの飲み干し」は、強いこだわりになります。

環境:状態が崩れていくと、飲み干す行動がエスカレートしていきます。「少し崩れた状態」では、指示で行動を止められます。「大きく崩れた状態」では、指示でいったん止められますが長くはもちません。「警戒警報」になると、指示も入らず見た瞬間に飲み干してしまい、「禁止」の指示で逆に自傷や他害の可能性もあります。
  →この場合、行う環境整備は、「徹底してペットボトルが視野に入らないようにする」になります。


最初に書いたように、状態の表われ方が一人ひとり大きく違うのが、特に知的に重度のASDの人なので、本書に書かれている分類やそれに対応する支援も、当然ながらそのままでは使えるわけではありません。ここに書かれているのは、あくまで、きらくんで上手くいった、あるいは目指しているという支援のやり方です。

 

本書を読まれた保護者の方は、自分なりのわが子のサインの見つけ方や、その対応を自分で考えていかなければなりませんね。本書は、それにとりかかるための、考え方の道標、たとえるならばふもとの駐車場で見つけた「ここから登ります」という“登山口”の案内板のように感じました。


でも一人ひとり違うとしても、親として我が子の幸せを願う思い、それは同じですね。

苦しい状態にあるのに、自分が困っている原因もわからず、そこから抜け出す手立てもわからず苦しんでいるのなら、それに対する支援が必要です。その支援が、状態を整える支援です。
私は、きらに少しでも早く、少しでも長い時間を「落ち着いている状態」で過ごしてほしいです。
それは、障害の有無にかかわらず、生きる基本だと思います。
このように考えると、状態を整える支援は特別なものではなく、人が「落ち着いた状態」で過ごすという、当たり前の、生きるために必要な支援だと思います。


はじめに高橋さんが訴えているとおり、確かに書店を覗いてみても、重い自閉症の方への具体的な支援の本は少ないのが現実でしょう。
本書がそんな保護者の方の取り組み方への、数少ない参考の一冊となれば、と紹介させていただきました。


                     (「育てる会会報 331号」(2025.11) より)

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目次

  はじめに

  序章 親のフェードアウト

1部 強度行動障害・問題行動のための『支援の基本』

  1章 3つの視点で       『支援の意味』が見えてくる
  2章 合わせる力を意識すると  『本人の状態』が見えてくる
  3章 サインを拾うと      『必要な支援』が見えてくる
  4章 状態を共有すると     『支援の基準』が見えてくる

2部 強度行動障害・問題行動のための『支援のコツ』

  5章 「風雲・自閉城」で支援の 『介入ポイント」が見えてくる
  6章 問題行動への支援のコツ1 『立て直し支援』の基本
  7章 「立て直し支援」介入・修正のポイント ~3つの視点から~
  8章 問題行動への支援のコツ2 『予防支援』で問題行動を防ぐ

  おわりに

『 日本のインクルーシブ教育とは 

    ~発達障害・共生社会・特別支援のこれから~』

野澤和弘:編著 植草学園大学発達教育学部:著  ぶどう社  定価:2000円+税  (2025.3)

 

           私のお薦め度:★★★☆☆
 
この私のお薦め本コーナーでも「あの夜、君が泣いたわけ」「条例のある街」など、何度か紹介させていただいた、野澤和弘氏の近著です。
野澤さんについては、、すでにご存じの方も多いと思いますが、毎日新聞の記者としていじめ問題や障害者虐待などに取り組み、ご自身が自閉症児を育てる父として、発達障害の啓発や施策の実現に向けて尽力されていらっしゃいます。そんな野澤さん、毎日新聞の夕刊編集部長や論説委員などを勤められた後、現在は植草学園大学で副学長・教授をされていらっしゃるそうです。
本著はその植草学園大学で、野澤さんをはじめ各先生方がWEB連載された「いんくる♥教育」を加筆・改編してまとめられたものです。


植草学園大学とは、初代学長の小出進先生が特別支援教育を大事にするという理念で創立された大学で、幼児教育でも保育でも小学校教育でも特別支援を浸透させていこうとした「インクルーシブ教育」を理念として掲げています。

一方で私たちは、自閉症児の教育においては、将来の自立のためには定型発達の子どもたちのクラス(少なくとも現在の日本の普通学級のクラス)にインクルージョン(包摂)して過ごさせるよりは、一人ひとりに合わせた特別支援教育を行なうことの方が効果的であると感じています。現に、そう考えている保護者が多くなってきたためか、どこの特別支援学校でも入学希望者が増え、教室が足りなくなっていると聞きます。
そしてそれは十分ご存じのはずの野澤さんたちが、インクルージョン教育に対してどのような方向性を持っておられるのか・・・興味を抱いてページを開きました。

まず、本書では2022年に国連障害者権利委員会から公表された「総括所見」から話が始まります。これは当時、かなりマスコミを騒がせたので記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

総括所見は各国政府の障害者政策への「懸念事項」と、それに対する「要請」から構成されています。日本の障害児教育の「懸念事項」を直訳すると、このように書かれています。
「分離された特別な教育は、特に知的障害や精神(発達)障害、もっと手厚い支援が必要な障害児を通常の環境での教育にアクセスしにくいものになっていること、それは通常の学校における特別支援教育クラスの存在も同じであること」
一方、懸念事項に対する「要請」はこのように書かれています。
「分離された特別な教育をやめるために、障害のある子のインクルーシブ教育を受ける権利を認め、質の高いインクルーシブ教育に関する国の行動計画を策定し、すべての障害のある生徒があらゆるレベルの教育において、合理的配慮や必要な個別支援を受けられるようにすること。国の行動計画には具体的な目標や時間枠の設定、必要な予算の確保が含まれなければならないこと」


これをマスコミでは、障害者の強制入院を辞めることなどと並べて、分離された特別教育(すなわち、特別支援学校や特別支援学級)の廃止を要請された、と見出しをつけて報じたため騒ぎになってしまったわけですね。そこだけを強調して、かっての統合教育を薦めていたような方が、我が意を得たりと、「だから特別支援学校などは廃止して、みんなと一緒に地元の普通学級に通わせるべきだ! そう国連も勧告している!」などと声高に言っていたような・・・・

でも、改めてじっくり読み返してみると、野澤さんの言われるように、「国連の総括所見を全体の構成から見れば、分離された特別な教育をやめるのはいわば自明の理であり、そのために実行性のある国の行動計画の策定を求めていると読むのが自然です」ということになるのでしょう。

最近は特別支援学校を希望する児童・生徒が増え、どこの学校も教室が足りず先生たちも余裕がなくなってきましたが、それは特別支援学校での合理的配慮や個別支援が子どもたちや保護者に評価されてきたからとも言えます。あるいは、普通学級での集団活動と学習に障害のある児童・生徒は付いていけず、必要な合理的配慮がなされていないため、消極的な理由で特別支援学校が求められているのかもしれません。
そうであるならば、特別支援学校の存在を否定的に見るのではなく、通常学級の改善や充実を促し、障害のある子が安心して学習できる通常学級にすることを考えなくてはなりません。そこに力点を置いて国連障害者権利委員会は日本政府に要請しているのではないでしょうか。
そして、特別支援学校での合理的配慮や個別支援の実践の蓄積こそ通常学級の改革に生かさなければなりません。障害とは実に多様で、専門的な知識や経験がなければ適切な支援や教育をすることができません。障害のない子どもと同じように接することが、むしろ障害のある子を混乱させ、自傷他害やパニックなどの行動障害を引き起こしたりもしています。
国連障害者権利委員会の総括所見はとても重要なことを指摘しています。「懸念事項」や「要請」に書かれていることを断片的に取り上げるのではなく、全体を通して真意をくみ取り、日本の現状に合った取り組みを進めていくことが求められているのだと思います。


やはり、同じ思いで納得しました。さあ、安心して読み進めていきましょう。

そして、本書ではここから、植草学園大学に勤められている各先生方から、エピソードなども交えながら、ご自身がインクルーシブ教育、合理的配慮などについて考えていることなど書かれています。
その中でも私が印象に残っている話を紙面の関係で一つだけですが、紹介させていただきます。

筆者が講演や授業で必ず取り上げるエピソードがあります。それは、激しい離席を繰り返し、担任から厳しく叱責されつづけた小学校1年生の次の一言です。「ぼくも、みんなみたいに、すわってべんきようしたい!」 筆者の胸に突き刺さりました。その子どもが「座る努力」をしているようには少なくとも私の目には全く見えなかったからです・・・。
「子どもに学ぶ。子どもに気づかされる」重要性はよく言われることです。筆者にとつては、この子どもの一言に学んだことの大きさは計り知れません。この子どもに出会うことがなければ筆者は本当に視野と了見が狭いまま教職人生を終えていたに違いありません。 (中略)
離席という一つの「問題」を目の当たりにしたときに、私たち教師が客観的に観察可能な離席にだけ目を向けて、じつとしていられない「困った」子どもと理解するのか? あるいは、子ども本人の「着席していたい」という本音の思いに寄り添い、努力をしても着席できずに「困っている」子どもと理解するのか? この両者には、天と地ほどの「理解の乖離」が横たわっているのです。
(佐藤慎二氏:植草学園短期大学 特別教授)


よく、パニックなど問題行動が起こったとき、「本当に困っているのは本人!」 という話は聞きますが、それを自らの実体験、自らの力足らずの猛省として、自分側の問題として捉えることができるか、できないか・・・それがその後の教職人生、支援者人生、そして保護者としての人生を左右する分岐点になるかもしれないと思わされたエピソードでした。

それでは最後に座談会「特別支援教育はどこをめざすのか」の中で語られた、野澤さんの話を、みなさん・・・、今特別支援学校に通われている方、これから特別支援教育を受けられる方、そして特別支援教育に関わられている先生方、みなさんにも聞いて欲しくて、今月のお薦め本の締めとします。

野澤 ― 特別支援学校の先生から「良い企業へ就職するために学校ではどのょぅなことをする必要がありますか」と尋ねられることがありますが、ある企業で障害者雇用を担当している社員に言われました。「パソコンの入力ができる、文字が読める、それも大切ですが、本当はご家族や先生方に会いたぃ。どれだけ大事に育てられてきた子なのかを知りたいからです。今何ができるかよりも、自分自身への肯定感をしっかりもっていることの方が大事です」
消費者が求めるものは時代とともに変わり、それに合わせて産業構造も変わっていきます。どのような仕事が求められるのかは今後も変わっていきます。今何ができるかはそれほど重要ではない。学校で教えられていなくても、社内の研修で必要なことを身に付けさせられるというのです。
自己肯定感がある人はそうした変化にも対応できる、自分を大事に思える人は働く仲間や会社のことも大事に思える。だから、学校にいるときは一人ひとりを大事にして生きる力を付けるような教育をお願いしたいと言われました。


        (「育てる会会報 330号」 (2025.10) より)

 

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目次

  はじめに

1章 特別支援教育はどうなる? ・・・・・・・・・・・・ 野沢 和弘

  1 1国連から批判を受ける
  2 日本のインクルーシブ教育
  3 諸外国はどうなっているのか
  4 国連の勧告の焦点は

 コラム1 日本だけが遅れているのか?


2章 「特別」ではない「支援教育」を ・・・・・・・・・ 佐藤 慎二

  1 「一匹と九十九匹」
  2 平成の黒船は宝船
  3 理論的玄人と天才的素人
  4 ようこそ! ディズニーランドヘ!
  5 「自立」は「孤立」で「支援」は「無援」か?
  6 障害者差別解消法元年の悲劇を乗り越えて

3章 特別支援学校の開かれた学校づくり ・・・・・・・・ 佐川 圭子

  1 養護学校義務制スタートの頃
  2 Aさんも〇〇小学校の一員
  3 スポーツを通じた地域交流
  4 地域と共に

 コラム2 きょうだいのこと

4章 障害のある生徒たちの「働く」を考える ・・・・・・ 高瀬 浩司

  1 ワークキャリアからライフキャリアヘ
  2 養護学校義務化と「働く」学び
  3 特別支援学校におけるライフキャリアの形成
  4 企業との本物の連携によるキャリア教育のすすめ

 コラム3 就労の可能性と課題

5章 今こそ、実践したい各教科等を合わせた指導 ・・・・・ 名古屋 恒彦

  1 前提としての自立論
  2 よいつながりを築く「できる状況づくり」
  3 特別支援学級の教育と各教科等を合わせた指導
  4 各教科等を合わせた指導、本音の魅力

6章 復興支援を続けるということ ・・・・・・・・・・・・ 名古屋 恒彦

  1 支え合いとしてのボランティア活動
  2 ニーズは変わる、しかしなくならない

 コラム4 今や、人気の障害者支援

7章 自己理解が育つ上で必要なこと ・・・・・・・・・・・ 堀 彰人

  1 ひろし君に教えられたこと
  2 生徒たちの選択
  3 「信頼」が育つ場 ~困難さを共に過ごす~
  4 出会い続けるために
  5 特別支援教育を担っていく卒業生ヘ

8章 発達障害について考える ・・・・・・・・・・・・・・ 野澤 和弘

  1 急増する発達障害
  2 社会が発達障害をつくる?
  3 ユニークな才能が注目される

 コラム5 日本の子どもは幸せか

座談会 特別支援教育はどこを目指すのか 野沢 和弘/高瀬 浩司/渡邉 章/佐川 桂子

  おわりに

 

『 発達凸凹キッズの子育てナビ 』

石川道子・三輪桃子:著  中央法規  定価:1800円+税 (2025.8)

 

       私のお薦め度:★★★☆☆
 
副題の「年齢別にわかる! いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと」という言葉に惹かれて手にとりました。
今、取り組むべきこと、やっておいた方がいいこと・・・などというテーマの話はよく聞きますが、がんばらなくてもいいこと、やらなくてもいいことにスポットをあてた本は少なかったように思います。
もちろん、本書も「子育てナビ」ですから、そのメインは「いまがんばりたいこと」からスタートします。

診察の場で、せっかくの才能を伸ばせていなかったり、極端に自己評価が低下している発達凸凹キッズに出会うたびに、「もっと小さいころに適切なサポートを受けられていたら・・・」と、もどかしい思いにかられます。もし、子どもの発達に気になることがあれば、診断の有無にかかわらず、「発達凸凹キッズかもしれない・・・」と大きくとらえて、本書を参考にしていただきたいと思います。

本書の著者の一人である、発達専門の小児科医で「アスペ・エルデの会」の臨床統括ディレクターの石川道子先生の言葉です。
本書では、発達障害という言葉を使わず、“発達凸凹キッズ”という表現をされていますが、ここに書かれているように「大きくとらえて・・・」とのことですから、自閉症が自閉スペクトラム症ととらえられるようになったように、ほぼ対応は同じと解釈して読み進めていけばいいと思います。

適切なサポートを受けることができれば、得意なことを伸ばして苦手なことを減らしていくことができるので、よい経験をたくさん積んで成長することができます。大人になって、何か困りごとに直面しても、投げやりにならず、解決に向けて軌道修正しながら進んでいくことができるようになります。また、子どものころからまわりの人からの好意的なサポートに慣れていると、うまく人を頼れるようになります。
反対に、ひとまず様子を見ることにして、一般的なかかわり方を続けていると、苦手なことでも自力で解決するよう求められ、着替えやトイレなどの生活動作や、友だちとの適切なかかわり方など、多岐にわたり必要なことが身につかない可能性が高くなります。よい経験や身につけてきたことが少ないため、大人になつてからも新しい経験をすることを躊躇するようになることもあります。


本書では、その適切なサポートについて年齢別に、具体的に列挙されています。それも「0歳の時期」、「1~2歳」、「3~6歳」、「7~9歳」「10~12歳」「中学生・高校生」と細かく区切って、それぞれに「この時期の発達凸凹キッズの特徴」、「この時期にがんばりたいこと」、「がんばらなくてもよいこと、気をつけたいこと」、「この時期に起こりやすい困りごと」の4項目を説明されています。

こんなに細かく分けているのは、最初の「発達凸凹キッズの子育ての心得」の中にあるように、「苦手なことはそのままにしない」ということがあるからでしょう。

一般的には、子どもは、できないことや苦手なことがあっても、成長のなかで自然とできるようになっていきます。いっぽうで、発達凸凹キッズは、苦手なことをそのままにしておくと、いつまでも苦手なままになってしまうという特徴があります。
着替えや食事などの生活動作は、発達凸凹キッズが大人になってからも苦手になりやすいことの1つです。発達凸凹キッズは、からだを上手に使うことがむずかしく、一つひとつの動作の習得に時間がかかるため、負担を感じやすくなります。さらに、サポートがないと上達せず、効率の悪いやり方で取り組み続けているので、年齢が上がるほど生活動作が「めんどうなもの」になっていきます。そうすると、着替えやお風呂などを先延ばしにしたり、ひどい場合は最低限の清潔を保てなくなることもあります。


そのため、その年代ごとに、つまずきやすいポイントに注意して丁寧にサポートしていくことが求められるわけです。
確かに、我が子たち、暗黙のルールも苦手ですし、教えてもらっていないものは身につきません・・・その分教えてもらって覚えたものは、律儀に守ってくれますね。

一方で副題にあった「がんばらなくてもよいこと」、これも年代によって具体的に書かれています。
たとえば「3~6歳」では「無理に同年代の子どもだけで遊ばせなくてもよい」とか、「園の独自のルールはふんわり流してもよい」とか、本人の様子を見ながらがんばりすぎない、がんばりさせすぎないという子育てを勧められています。
これが「7~9歳」になると、「宿題をまわりと同じようにこなそうとしなくてもよい」とか、「親と一緒に授業を受けない」という風になってきます。それはこの時期、普通学級に通われていると、学校に慣れることが難しい場合には登校しぶりや不登校に陥ることもあるからでしょう。

 

その中でも「親と一緒に授業を受けない」を挙げられたのには、こんな理由もあるそうです。

最近では、登校しぶりの対応の1つとして、「親と一緒に授業を受ける」方法が選択されることが増えています。最初は見守り程度のつもりが、なし崩し的にいつのまにか授業への付き添いがあたりまえになっていくこともあります。
しかし、親と一緒に授業を受けることはできるだけ避けたいものです。なぜなら、親の仕事、つまり生活を支える手段を奪いかねないからです。また、本来は子どもが学校に行きたがらない理由を考えて環境調整を試みますが、「保護者がいるから大丈夫」という理由で学校側の調整が進まない懸念もあります。子どもが親と離れて生活する力を育てることも妨げてしまうことになり、少し厳しいい方ですがメリットはありません。


こんな風に年齢別に参考になることが多い本書ですが、一般のお母さんでもマニュアル的な子育て本に振り回されてしまう方が多いように、本書でも細かく年代が分かれているだけに、余計に不安を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。

でもそもそも、発達の凸凹の差が一人ひとり大きく違うのが「発達凸凹キッズ」です。

子どもの実年齢のページを読んだときに、「いまの子どもの姿と合わない」「いまの子どもにはむずかしすぎる」と感じた場合は、実年齢よりも前の年齢のページにさかのぼり、現状の子どもの姿に合う内容を見つけてください。
下ごしらえが不十分だつたり、手順を飛ばしてしまったりするとおいしい料理ができないのと同じように、準備や土台ができていないと、年齢が上がったときに思わぬ困りごとが出てくることがあります。
「身につけてこなかったな」と感じることは、年齢をさかのぼって、改めて取り組んでみるという視点も大切です。


今、子育て中のお母さん方には力になってくれる、また肩の力を抜いて気持ちを軽くしてくれる一冊だと思います。大いに活用していただきたい今月のお薦め本です。

                             (「育てる会 会報 第329号」(2025.9) より)

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目次 

  はじめに ・・・・・・・・ 石川 道子

第1章  発達凸凹キッズの子育ての大原則

  1 発達凸凹キッズとは
  2 発達凸凹キッズの子育ての大原則
  3 大人になつた発達凸凹キツズの特徴

  コラム 大人になつた発達凸凹キッズのほっこりエピソード

第2章 年齢別にわかる! 発達凸凹キッズの子育て

     この章の使い方

 ① 0歳の時期
  1 この時期の発達凸凹キッズの特徴
  2 この時期にがんばりたいこと
      子どもの生活リズムを積極的につくる
      さまざまな姿勢を意図的に経験させる
      まわりの世界への気づきをうながす
  3 がんばらなくてもよいこと、気をつけたいこと
      スマホや自動で動くおもちゃばかりで遊ばせない
      離乳食は「標準どおり」にこだわりすぎない
      苦手な感覚を選ざけすぎない
  4 この時期に起こりやすい困りごと

 ② 1~2歳の時期
  1 この時期の発達凸凹キッズの特徴
  2 この時期にがんばりたいこと
      生活動作をとことん練習する
      パニックを未然に防ぐ
      ポジティブな人間関係を経験させる
  3 がんばらなくてもよいこと、気をつけたいこと
      順番待ちやモノの貸し借りができなくても責めない
      独自の遊び方を助長しない
      ことばの表現ばかりに注目しない
  4 この時期に起こりやすい困りごと

 ③ 3~6歳の時期
  1 この時期の発達凸凹キッズの特徴
  2 この時期にがんばりたいこと
      パニックの予防方法と回復方法を教える
      SOSを出してよかったという経験を増やす
      「できた」ときの気持ちよさを知る
      ひきつづき、生活動作をとことん練習する
  3 がんばらなくてもよいこと
      無理に同年代の子どもだけで遊ばせなくてもよい
      園の独自のルールはふんわり流してもよい
  4 この時期に起こりやすい困りごと
  5 就学前の準備

 ④ 7~9歳の時期
  1 この時期の発達凸凹キッズの特徴
  2 この時期にがんばりたいこと
      無理なくすごせる環境でお友だちとかかわる
      小さなお手伝いの習慣をつける
      客観的に見た子どもの姿をことばで伝える

  コラム パニック(かんしゃく)がなかなか改善しない!?

  3 がんばらなくてもよいこと、気をつけたいこと
      宿題をまわりと同じようにこなそうとしなくてもよい
      親と一緒に授業を受けない
  4 この時期に起こりやすい困りごと

  コラム 発達凸凹キッズの宿題トラブル

 ⑤ 10~12歳の時期
  1 この時期の発達凸凹キッズの特徴
  2 この時期にがんばりたいこと
      「ななめの関係性の人」を増やす
      自分のことを自分のことばで説明する
  3 がんばらなくてもよいこと、気をつけたいこと
      先回りしたサポートはしなくてよい
      頭ごなしに否定しない
  4 この時期に起こりやすい困りごと

 ⑥ 中学生・高校生の時期
  1 この時期の発達凸凹キッズの特徴
  2 この時期にがんばりたいこと
      どうしても家でやってほしいことは厳選して伝える
      「先回りしたサポート」を完全に抜いていく
      得意なことについて「本物」や「専門家」との出会いをつくる
  3 気をつけたいこと
      本人の希望ではない進路を押しつけない
      社会的にNGな行動を教えるときは「説教」をしない

  コラム 犯罪行為にかかわつてしまつたら・・・

  4 この時期に起こりやすい困りごと
  5 進学/新生活の準備


第3章 発達凸凹キッズの子育ての困りごと対応法

      この章の使い方

  1 他者にさわる
  2 感覚が敏感または鈍感すぎてできることが限られる
  3 行動が唐突で目が離せない
  4 こだわりが強い、マイルールがある
  5 偏食がある
  6 動画コンテンツにはまりやすい(遊びが広がらない)
  7 睡眠リズムが安定しづらい
  8 じっとしていられない、座りつづけることが苦手
  9 買いたい気持ちを抑えられない(金錢感覚が身につきにくい)
  10 気持ちや行動の切り替えが苦手
  11 約束を守れない、何回言っても伝わらない
  12 性器をさわるなど許容されにくいクセがある

第4章 子育てのサポーターとの関係づくり

  1 親以外のサポーターが必要な理由
  2 保育園や幼稚園とのかかわり方
  3 学校とのかかわり方
  4 祖父母や親戚とのかかわり方
  5 お友だちの親とのかかわり方
  6 療育機関の選び方
  7 「診断」をどう考える?

  コラム 薬についての誤解と効果的な使い方

 参考文献

 おわりに ・・・・・・ 三輪 桃子

『 マンガでわかる 発達が気になる子の検査・診断・支援』

岩永竜一郎:著  中央出版  定価:2000円+税 (2023.5)

 

         私のお薦め度:★★★★☆

育てる会でも以前 講演をお願いした長崎大学教授の岩永竜一郎先生の著書です。

講演会では作業療法士としての視点から、主に自閉症児の運動・感覚面の視点からお話しをいただき、とても参考にさせていただいたのを覚えています。
本書では、学校での巡回相談から見えてくる支援のあり方について述べられていらっしゃいます。

最初にお断りしておかなければいけないと思うのが、本書のタイトルです。

最近ではよく「マンガでわかる・・・」とか「イラスト版・・・」というような、発達障害の本を見かけるようになりました。私もこのコーナーで何冊か紹介してきました。それは、主にASDや発達障害についての入門書であったり、自分の特性に気づき始めた本人へのわかりやすい解説書であったように思います。

本書もタイトルでは「マンガでわかる 発達が気になる子の検査・診断・支援」となっていますが、このマンガの部分は他の多くの入門書のような内容の解説ではなく、ストーリーを進行させるためのナビゲートの役割となっています。

登場するのは2つの事例です。一つは小学校で発達障害に気づかれた拓也くん。もう一つは5歳児健診のスクリーニングで発達の遅れに気づかれた翔くんのケースです。
最初の拓也くんの場合、巡回相談の先生から紹介されて受ける各種機関での検査と診断、支援が紹介されています。もちろん、現実に即した厳しい話題もでてきます。
たとえば、巡回相談の先生から紹介があったとしても、専門の小児科医による診断までには半年待ちになるとか、専門の南部療育センターでは枠がいっぱいで直接の療育は受けられないとか・・・このあたりは岡山も岩永先生のおられる長崎県もそんなに変わりはないようにも思えます。


それにしても、「巡回相談で用いることがある検査ツール」として紹介されているツールは多岐にわたります。これらを駆使して検査にあたれば、診断の精度も上がり、その後の支援の方向性を決めることができるようになるのでしょう。

著者は巡回相談において、対象の子どもの特性や困りごとに応じて、アセスメントツールを選択し、組み合わせて用いています。例えば、多動性があり、授業中に授業に集中できず動き回ってしまう行動がみられ、他児とのトラブルが多く、成績が低位の子どもであれば、次のようにアセスメントを組み合わせます。
フォーマルなアセスメントとして、WISC-Ⅳなどの知能検査を実施し、ADHD-RS-Ⅳ、ASSQ-Rを保護者、教師に回答してもらい、さらに保護者には短縮版感覚プロファイルにも回答してもらいます。子どもの教室での行動・学習の状況、学校の環境、教師や保護者の理解や関わり、学習課題などについては、観察や面談によるインフォーマルなアセスメントを行います。


岩永先生が巡回相談で使ったことがあるアセスメントツールを、名前だけでも列挙すると次のようになります。
スクリーニング検査としては「ADHD-RS-Ⅳ」・「ASSQ-R」・「児童版AQ」・「LDI-R」、学習機能の検査としては「STRAW-R」・「URAWSS」、行動質問紙「こどもの行動チェックリスト(親版CBCL・教師版TRF・本人版YSR)」、適応行動尺度「Vineland‐Ⅱ」、認知検査として「WISC‐IV」・「K‐ABC‐Ⅱ」、感覚・運動機能検査として「感覚プロフアイル」・「感覚・動作アセスメント」、
その他として「高次心の理論検査」 ・・・などとなるそうです。


聞いたことのある検査もありますが、今回初めて耳にした検査も多いです。

これらを学校での巡回にあたり、子どもの様子を見ながら適宜に組み合わせて診断されるのが巡回相談の先生、それが岩永先生ならではなのか、はたまた岡山でもすべての先生がそうなのか(そうあってほしいですが・・・)・・・・なんとなく、ここまでの専門知識を持ってアセスメントをとってくれるのは、岩永先生ならではのような気もいたします。

 

本書のタイトルの最初に「検査」とあるように、アセスメントがどれほど大切なのか、改めて感じさせらた本書でした。それぞれの検査の内容や使い方は、本書の本文の部分に詳しく書かれていますので参考にしていただければと思います。

本書で強調されているのは、「検査」「診断」はもちろん大切ですが、それをどうその後の「支援」につなげていくかということがもっと大切だというです。
マンガの中でも、こんな風に言われています。

発達障害のある子どもは周囲の関わりによつて行動面、対人関係面、学習面などが大きく変わる場合が多いです
療育や教育の配慮が不可欠です
大人になるまでに適応力が上がり就労につながる人も多くいます
逆に支援がなされないと2次的な問題が大きくなることがあります


それについては、最終章「発達に特性のある子どもの未来に向けて」では、アセスメントを経てからの人との関わりや環境要因の大切さが書かれています。

少し長くなりますが、結びの言葉として紹介させていただきます。

発達障害がある子どもたちは、将来どのようになるのでしょうか。これは、子どもの発達についてアセスメントするだけでは、一概に予測できません。それまでの支援、周囲の理解、仕事とのマッチングなどで適応は大きく変わります。子どもの障害のタイプや重症度ですべてが決まるわけではありません。子どもが受ける関わりや環境要因との相互作用で適応状況が決まっていくということです。


重度の知的発達症を伴うASD児が早期から支援を受け、子どもに合った特別支援教育が提供され、障害に理解がある職場で特性を活かせる仕事に就いた場合、非常に適応的となることもあります。

 一方で、知能は平均以上でコミュニケーションスキルが高いASD児が、サポートを受けずに育ち、配慮がない職場での仕事に就くと大きな不適応を起こすことがあります。


発達障害者の成人期の適応のためのキーポイントとして、親の理解、自己理解、それまでに受けた支援や特別支援教育、仕事または日中活動とのマッチング、受けているサービス、大人になってからの人的・物理的環境要因があります。

ここに書かれているように、まずは早期発見からの早期療育、その後の本人に合った特別支援教育、そして障害に理解のある職場へ就労することが叶うのであれば、ASD児の将来には充実した生活が待っているのではないでしょうか。
育てる会でも療育やグループホームでの支援を続けて、そのための一助となれるよう頑張っていきたいと思います。

そしてそのためのアセスメントの大切さと支援の方向性を教えられた、今月のお薦め本でした。

                      (「育てる会会報 328号」(2025.8) より)

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目次

  はじめに

第1章 マンガでわかる診断の流れと支援

 ケース Ⅰ 小学校で行動の問題や学習面での遅れがみられる

  第1話 小学校2年生時に担任からの指摘を受ける
        小学校低学年まで気づかれない背景とは
        学校でなされる話し合いの流れ

  第2話 巡回相談員との面談
        学校で受けられる支援とは
        学校で出会う支援者とその役割
        知能指数
        WISC-Ⅳの指標
        WISC-Vの指標
        特別支援教育に関わる制度改正/
        特別支援学校
        特別支援学級
        通級指導教室
        就学先の決定

  第3話 医療機関での診断と対応
        小児科医と児童精神科医
        公認心理師と臨床心理士
        KABC-Ⅱ
        言語聴覚士の役割と支援
        改訂版 標準読み書きスクリーニング検査(STRAW‐R)
        JPAN感覚処理・行為機能検査(JPAN)
        WISC-V
        ASSQ-R
        ADHD-RS-Ⅳ
        アセスメント検査全般の解説
        発達障害の診断の考え方
        薬物療法の種類、効用
        薬をいつまで飲み続けるか

  第4話 サービスの利用
        ペアレント・トレーニング
        親子相互交流療法(PCIT)
        感覚統合療法(SI)
        ことばの教室
        放課後等デイサービス
        障害福祉サービスの種類と利用方法

 ケース Ⅱ 5歳児健診で指摘を受ける

  第1話 5歳児健診
        乳幼児健診と発達のスクリーニング

  第2話 児童発達支援事業の手続き
        日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)
        児童発達支援事業所の特徴

  第3話 医療機関の受診
        対人応答性尺度第2版(SRSl2)
        WPPSI-皿
        Vineland-Ⅱ適応行動尺度
        LCスケール
        CCC-2
        感覚プロファイル
        発達障害児の感覚特性
        発達性協調運動症(DCD)
        二次的問題
        自閉スペクトラム症(ASD)
        発達障害における相談機関
        親の会

  第4話 就学相談
        就学前の流れ
        保育所児童保育要録

第2章 発達障害の概念と診断・支援までの流れ

  Ⅰ 発達障害のアセスメントで使われる評価ツールとその意味

    1 スクリーニングから診断・評価ヘ
    2 包括的なアセスメント
    3 教育・福祉的なアセスメント
    4 モニタリングのためのアセスメント

  Ⅱ 支援の意味と必要性

    1 発達障害にみられる問題の改善に有効な介入が適用できることがある
    2 二次的な問題の予防ができることがある
    3 親への効果的な支援ができる

  Ⅲ 発達に特性のある子どもの未来へ向けて

    1 親の理解
    2 自己理解
    3 それまでに受けた支援や特別支援教育
    4 ジョブまたは日中活動とのマッチング
    5 受けられるサービス
    6 大人になってからの人的・物理的環境要因

  参考文献一覧

  著者紹介



 

自閉症の手引き ~あなたの隣のレインマンを知っていますか~

社団法人 日本自閉症協会  定価:200円 (1995.3)
監修 石井哲夫・太田昌孝・佐々木正美・藤村出・山﨑晃資  絵:和田誠


                             私のお薦め度:★★★★★

まだまだ自閉症というものが社会に理解されなかった頃、日本自閉症協会より発行された冊子です。
本文は14ページで、和田誠 氏のイラストも可愛くて、わかりやすく、周りの方に息子の障害について知っていただくには格好の冊子でした。
我が家でも何冊か購入して、「てっちゃん通信 1」や「てっちゃん通信 2」などと一緒に親戚や近所の方、学校の先生などにも渡して読んでもらっていました。「てっちゃん通信2」を読むと、朝日新聞の記者さんにまでこの冊子を渡していたようです・・・ということは、当時は新聞記者の方でも、“自閉症”についてはあまりご存知なかったのでしょうね。

その意味では、とても助けられた冊子だったのですが、安いとはいえ定価が200円でしたので、あまり多くの方にまでは渡せなかったのも現実でした。ですから、この冊子が日本自閉症協会のホームページに掲載され、自宅で印刷できるようになったのは望外の喜びでした。


これでもっともっと多くの方に自閉症について正しく知ってもらえる!・・・・ところが、ところが突然このページが削除されてしまいました。
聞くところによると、「200円で販売している冊子を、無償でダウンロードさせるなどケシカラン!!」という横ヤリが入ったそうです。
一体どちらを向いての発言なのでしょう。自閉症児を持つ親の望みは、一人でも多くの人に自閉症というものを理解してもらい、将来にわたり支援してくれる人を一人でも増やしたい・・・それだけだったのに。情けなくて言葉も出ませんでした。
もちろん、この冊子はすばらしく、200円以上の価値があるものでしたので、その意味でも残念でした。

そんな恨みつらみを、(酒の勢いもあって)当時参加していたメーリングリストにぶつけてしまったところ、みなさん分かってくれて、その場で「じゃあ、代わりのモノを作りましょう!」ということで、話がアッという間にまとまりました。
基にするのはノースカロライナ大学 TEACCH部がインターネットに公開していた「20の質問と答え」(AUTISM PRIMER:TWENTY QUESTIONS AND ANSWERS)に決まりました。

ここから後は、メーリングリストに参加されていた専門家の方たちが、訳を分担したり、TEACCH部の許可をもらってくれたり、簡単に印刷できるように三つ折りの形に構成してくれたり・・・自閉症協会京都支部(当時)の協力もあり、あっという間に出来上がりました。(1999.10)
それが『新しい自閉症の手引き ~自閉症Q&A~』です。
もちろん今度はインターネットから無償で印刷できます。私たちも大いに利用させていただきました。

ところが、ところが、インターネットへの公開にあたり、メーリングリストの参加者(タコさん)のアドレスを使わせてもらっていたため、環境が変わり「Q&A」に載っているアドレスでは見られなくなってしまいました。
現在は、A4で1枚ものの「Q&A」が資料として厚生労働省のHPに残っていますので、今のうちに(いつまで残っているかは保証できませんので・・・)ご覧になってください(三つ折りのデータはみつかりませんでした)。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/07/dl/s0730-6a1.pdf

そんなこともあり、今度は消えてしまわないようにと、私たちの手で作ろうと制作したのが「自閉症のしおり」です。こちらは財団法人たばこ産業弘済会、社団法人日本フィランソロピー協会、日本財団さんからの助成をいただき作成しました。(2000.3)
また、その後自閉症の診断基準が周知され、高機能な方への対応も求められるようになったため、今度は文部科学省さんからの助成をもらい「自閉症のしおり(改訂版)」も作成しました。(2010.4)

ですから、本冊子「自閉症の手引き」は、私たちの「自閉症のしおり」のおじいちゃんにあたると言えるのでしょうね。

そんな事情もあり、本冊子の内容をインターネットで紹介する訳にはいきませんので、「まえがき」だけ紹介します。私たちの思いも同じです。

あなたの隣りのレインマンを知っていますか

レインマンという映画で、自閉症がたいへん有名になりました。しかし、自閉症とはどんな障害なのかということになると、うまく説明ができません。
この手引では、自閉症について、できるだけ分かりやすく説明するつもりです。

自閉症の人は、日本では約24万人いると考えられ、障害の中でも、最も難しい障害と言われています。それなのに、自閉症ということでは今まで法律上は障害者として認められていませんでした。自閉症の為に、社会生活で困っていたり、働けない人も、福祉サービスや年金の対象になっていなかったのです。

そのため、日本自閉症協会は、この人たちのための教育、福祉、雇用を保障するよう運動を続けてまいりました。 その結果、平成6年、障害者基本法の改正にあたって、その付帯決議に自閉症が記載されました。これからは自開症の人たちの未来も明るく開けていくものと思いますが、何分、緒についたばかりの段階です。
多くの方々の、なおいっそうのご理解が何より大切だと考えまして、このような手引を作りました。


なお、現在はこの「自閉症の手引き」も改訂され、『自閉症を知っていますか? ~望むのはあなたの「心のバリアフリー」~』定価 510円(税込) として、一般社団法人 日本自閉症協会 より販売されています。

                                 (2025.8  旧「私のお薦め本」より引越し)
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日本自閉症協会 オンラインショップ】 より購入してください

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目次

1 自閉症って何だろう

2 自開症の特徴は

3 自開症の診断は

4 自閉症の原因は、何人ぐらいいるのだろう

5 なぜ親は困ってるのか(行動上の問題は)

6 知的障害とどう違うのか

7 自閉症を治すことはできないか

8 家庭での育てかたは

9 保育所・幼稚園での接し方は

10 学校での指導法

11 働<ことはできるだろうか

12 職場ではどう接したらいいのか

13 大人になるとどうなるか

14 自閉症の人に街て出会ったら


  資料 日本自閉症協会とは
     支部事務局名簿
     関係施設名薄

 

『自閉児・発達障害児 教育診断検査 』

E.ショプラー・茨木俊夫:著 川島書店 定価:4175円 + 税 (1990)

『 新訂 自閉児・発達障害児 教育診断検査 』

E.ショプラー・茨木俊夫:著 川島書店 定価:4500円 + 税 (1995.11)

『 自閉児・発達障害児 教育診断検査:心理教育プロフィール(PEP-3)の実際』

E.ショプラー 著、茨木俊夫 監修、服巻智子 訳 川島書店 定価:6000円 + 税 (2007.8)

 

         私のお薦め度:★★★★★

自閉症児たちの将来の自立に向けて教育方針をたてていくためには、まずそのスタートにあたり正しい評価、発達検査が必要となってきます。その根っこの部分で、従来の発達検査では、自閉症児の能力のアンバランスさゆえに把握しきれてない部分があったように思えます。

ノースカロライナ大学のTEACCH部で考えられた、この心理教育プロフイール(Psychoeducationl Profile 通称:PEP)は自閉症児・発達障害児の特性に配慮して作られています。その基本は発達的視点・教育的視点・コミュニケーションの視点・病理的視点からと網羅されていて、またその採点も特徴的で、合格・不合格のあいだにある「芽生え反応」というとらえ方を重視しています。
教育的観点から、この「芽生え反応」にある課題をうまく伸ばしていこうという考え方です。

したがって、この診断検査で評価をして終わりというのではなく、ここから個別教育プログラムを作成して始めていくという検査です。
作成されたプロフィール表を見て、強い所、弱い所、そして今芽生え反応にある所などに着目して、取り組むべき課題を決めていきます。

ただし、医療機関などにおいては、そこから先の教育分野においてはフォローが難しい場合もありますので、適当な療育機関が見つからない場合は家庭で取り組まなければならないケースも多いと思います。検査自体は専門用具が必要ですし(一部代用用具の解説もありますが)、検査への専門性から専門家の方にお願いするようになると思いますが、そこから先のプログラムには親の果たす役割も大きいと思います。

発達プロフィールと病理プロフィールのグラフができあがったら「自閉症児の発達単元 267」などを参考にして、子どものための療育を始めていきましょう。始めるための「PEP 教育診断検査」です。


なお、現在我が家にあるのは哲平が幼い頃に使用した1990年版です。その後「新訂」版が出版されているそうですが、当時の私の小遣い事情もあり内容までは確認がとれていません。
申し訳ないですが、以下の目次も1990年版のものです。
                                 

                             (2002.03)

その後、さらに「PEP-R教育診断検査」「改訂版」「三訂版」と改訂されて出版されているそうですので、これから購入される方は最新版をお求めください。

                            (2025.8  旧「私のお薦め本」より引越し)


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目次

Part Ⅰ 基礎と実践法

 第1章 自閉児の理解と教育カリキュラム

   第1節 自閉児の発見と診断
     ― 自閉児は何歳頃だれによって見つけられているか ―

   第2節 自閉症の診断基準
     ― 「自閉児」と確定するためにはどのような診断の基準が必要か ―

   第3節 行動的徴候による自閉児の診断法
     ― 小児自閉症評定尺度(CARS) ―

   第4節 医療・教育・福祉の統合

   第5節 成人期までの見とおしを持つこと

   第6節 長期的目標の設定
     乳幼児期
     3歳から就学まで
     就学
     小学校期前半
     小学校期後半~中学校期
     中学校期以降

   第7節 自閉児教育の意義

   第8節 学習目標の最優先課題

   第9節 問題行動への対処

   第10節 教育場面と方法の構造化

   第11節 カリキュラムの2大原則

  
 第2章 発達診断と自閉児・発達障害児教育診断検査(PEP)

   はじめに

   第1節 診断および発達診断の定義

   第2節 発達診断学の動向とその分類
     1) 伝統的発達診断学の流れ
     2) 小児医学、小児神経学の知見に基礎をおくもの
     3) 乳幼児検診実施の際のマニュアルに関わる物
     4) 諸外国における発達診断学の新しい流れ
     5) 日本における発達診断学の新しい流れ

   第3節 代表的な発達検査とその特色

   第4節 これからの教育診断検査

   第5節 PEPの基本原理

   第6節 PEPの基本的特徴

   第7節 その他の実施上の諸注意

   第8節 PEPの補足的利用


 第3章 自閉児・発達障害児教育診断検査(PEP)ができるまで

   第1節 ノースカロライナ州プログラムにおける治療契約(とりきめ)

   第2節 自閉児教育のための望ましい発達的評価

   第3節 『自閉児・発達障害児教育診断検査』翻訳版の刊行と用具の改良

   第4節 PEPによる事例研究

   第5節 実施手引の作成から個別教育プログラムの研究へ

   第6節 個別教育プログラムへ
      ― 個別教育プログラムの事例研究会の出発 ―

   第7節 TEACCHでのPEP実施に実際


 第4章 結果の解釈とケーススタディー

   第1節 得点とプロフィールの解釈
   第2節 事例 Ⅰ
   第3節 事例 Ⅱ


 第5章 自閉児・発達障害児教育診断検査(PEP)日本版・発達尺度の研究
  
   第1節 日本版作成にあたって

   第2節 方法

   第3節 結果と考察
     1) 模倣
     2) 知覚
     3) 微細運動
     4) 粗大運動
     5) 目と手の協応
     6) 言語理解能力
     7) 言語表出能力
     資料1~資料7


 第6章 検査に用いる用具について

   第1節 用具についての注意

   第2節 PEPに必要な検査用具一覧

   第3節 代用用具について

   第4節 検査用具解説と実例


 第7章 検査の構成と妥当性 ― TEACCHの資料 ―

   第1節 健常児のサンプルとの比較

   第2節 検査プロフィールの作成

   第3節 信頼性

   第4節 妥当性

 参考文献

 付録 検査記録用市とプロフィール用紙



Prat Ⅱ 検査項目解説
      採点基準と結果の解釈

 第1章 自閉児・発達障害児教育診断検査(PEP)をはじめる前に

   第1節 検査刺激に対する子どもの反応を吟味する

   第2節 反応を観察する

   第3節 子どもの「探索」を見る

   第4節 子どもの作業の習慣を観察する

   第5節 一般的注意
     1) 検査ラポート
     2) 検査の構成とタイミング
     3) 行動の統制
     4) 言語


 第2章 採点法

   第1節 発達尺度の採点の仕方

   第2節 病理尺度の採点の仕方

   第3節 各項目をいつ採点するか

   第4節 採点からプロフィールの作成まで


 第3章 検査項目解説

   第1節 7つの発達尺度と5つの病理尺度の検査(課題)一覧
     1) 発達尺度
     2) 病理尺度

   第2節 検査項目および採点基準

   第3節 図形模写の採点基準の例

   第4節 検査課題の補足

『 自閉症スペクトラム クラスメートに話すとき 』

服巻 智子:編・著 キャサリン・フェハティ、キャロル・グレイ:著

エンパワメント研究所  定価:1500円+税 (2015.2)

 

               私のお薦め度:★★★★☆

自閉スペクトラム症の本人への障害告知については、これまでも吉田友子先生の講演や著書「あなたがあなたであるために」などで、丁寧に取り上げられてきました。育てる会でも、何度もご講演いただいているので、会員のみなさんも触れられてこられたと思います。
さて、次の段階はそれをどのように周囲の人に伝えていくか、ということになりますね。特に知的障害を伴わない高機能な自閉スペクトラム症のお子さんの場合は、普通学級に在籍していることも多いので、伝える相手はクラスメートということになるのでしょう。

本書の構成は第1部では著者であり、編者も担当されている服巻智子先生による「クラスメートに話すということ」で、障害表明(Disclosure:ディスクロージャー)の持つ意義や、誰が話すのがいいのか、またその時期や方法について、服巻先生の実践例を交えながら解説されています。またその際に資料や教材として利用されているのが、第2部 キャサリン・フェハティ女史の「友だち理解プログラム」や、第3部 キャロル・グレイ女史の「シックスセンス Ⅱ」ということになります。

まず、その障害表明の意義の一つについて、こんな風に述べられています。

障害表明をすることを含む本人への自己認知支援とは、その取り組みを通して、発達に障害のある本人ばかりでなく、かかわる周囲のクラスメート、同僚ほか、親も教師も支援員も専門家も、誰もが自分自身の中にある差別や偏見や社会的圧力に負けそうになる弱い心と闘うことで、ともに成長していくことなのです

つまり、適切に障害表明(開示)することにより、クラスメートの誤解や偏見から抜け出すこともできるはずであり、それは周りのクラスメートにとっても成長を促すことにつながる、と考えられていらっしゃいます。

発達障害のある子どもたちの不可思議な言動は、ときに一般の子どもや大人たちの理解を超えたものであったり常識から逸脱したものである場合があり、周囲の人を驚かせ警戒させます。その場合に発生する相互作用によっては「からかい」や「いじめ」も発生します。ところが、それは相手のことが理解できないためにそのような相互作用に陥りがちなだけであり、相手の不可思議な言動の理由やからくりがわかれば、子どもたちは大人が推測する以上にたやすく理解し、接し方を学ぶものです。つまり、相手の不可思議さには理由があり、それに適切に対処すれば、自分が脅かされることはないと理解すれば、それなりの対応を取ることができるのです。

もちろん、こんな風にうまくいくためには、それなりの準備や作戦が必要になってきます。なにより担任の先生の資質や心構え、協力が求められます。

本書にも書かれているように、担任本人が学級崩壊や集団行動の困難をその子のせいにして、自らの能力不足を認めないような場合・・・、子どもたちはその教師の言動を結構見抜いていることも多いのではないでしょうか。そんな「本音と建前は違うもの」と考えている教師が、クラスメートに障害表明をしてしまったら、クラスメートは建前では理解したふりをしても学級崩壊は続き、いじめもなくならないようにも思えます。


残念ながら、その年はディスクロージャーは止めたほうがいいのかもしれません。でも、今の日本、「当り」の先生にあう確率はあまり高くないようにも感じられますね。
それは、次の「誰がクラスで話すのがいいか」の考察にも繋がっていくのですが、担任教師の人間性に信頼が置けない場合はかえって反発を受けることもあるということすね。一方保護者が話す場合は、公平中立さに欠け「えこひいき」とみなされるおそれがあり、これまた一部の生徒からの反発が予想されるため、少なくとも小学校中学年以上では親以外の方が望ましいと服巻先生は述べられておられます。


服巻先生のご推奨は、服巻先生ご自身のような「学校外の専門家」ということになるのですが、そんな専門家を見つけるのは「当りの担任」に出会うより、はるかに難しいのではないでしょうか。
少なくとも、岡山では・・・・

ですので、今できるのは、小学校低学年までに、親か、協力できる先生が、第2部・第3部で紹介されている「友だち理解プログラム」「シックスセンス(5感に加えての、友だちづきあいの感覚)Ⅱ」などを参考にして自分たちで行なうのがベストでしょうね。

最後に注意点として服巻先生が強調されておられるのは、きちんと障害表明ができたとしても、クラス中の全員が障害を理解して、いじめがなくなる訳ではない、ということです。

話を聞いたからといってすぐに理解してくれない人もいます。また、なかには受け入れたくないという人もいます。筆者はASDのある子どもたちで障害表明を考えるようになった子どもたちに、「他のひとたちに、自分のちがいをわかってほしい」と願うなら、「受け入れたくない」という人の気持ちを尊重するように教えています。

最後に紹介されている、自分で障害表明を決心した小学5年生の少年のことば、「わかってくれない人は仕方ないけど、わかってくれる人を増やしたい」。

彼は服巻先生に相談して、3ヶ月かけて準備をして、その日を迎えたそうです。それには保護者の方をはじめ、担任の先生、学年の先生方、校長先生など周りの大人たちがそれぞれの役割を果たして実現に至りました。
そして障害表明を行うことは自己権利擁護(セルフアドボカシー)に不可欠な事柄でありスタート地点である、と主張されていらっしゃいます。

子どもに障害があるとわかり、その事実を受け止めるのは相当の心の葛藤があるでしょう。しかし、それを乗り越えた人々の表情の明るさや力強さには、いつも感動を覚え、また私も生きる力をもらったような神聖な気持ちになります。いのちはどんないのちも美しく力強く輝いています。彼らの尊厳は誰にも侵すことはできない。その尊厳を守るため、そして、主張するため、私もいつもそばにいて、全力をあげて応援し続けたいと思うのです。 (服巻智子:「総論」より)

本書は新刊本ではなく、もう10年ほど前に書かれた本ですが、今も障害表明に関わる本質は変わってなく、また残念ながら障害表明を取り巻く環境もまたあまり変わっていないと思われるので、まだ本書を読んでなくて、今クラスメートに障害表明をするかどうか迷っている保護者の方には参考になる1冊と思い、今月のお薦め本として紹介させていただきます。

 

             (「育てる会会報 327号」 2025.7 より)

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目 次

序  服巻智子

第1部  クラスメートに話すということ   服巻智子

  第1章 子どもの障害について、クラスメートに話すこと
    1) はじめに
    2) 「子どもの障害を表明するといじめが増える」という先入観の間違い

  第2章 発達障害のある子どもにとって、障害を表明することの意義
    1) 障害表明の利点
    2) 障害表明のデメリット
    3) クラスメートたちの心理
    4) 周囲の子どもたちの理解と共感性を高めることこそ、究極の特別支援教育!
    5) Honesty―それは人間関係の基本
    6) 障害表明をすべきではないとき

  第3章 誰が話すのか?
    1) クラスメートに話す役割を担う候補者

  第4章 小中学校で障害表明をするときの指導例

  第5章 障害表明実施までの準備と手続き
    1) 障害表明の決断は本人が行うものである
    2) 保護者ときょうだいたちの心構えを支援する
    3) 支援者間の役割分担を明確化する
    4) クラスあるいは学年の保護者会への対応

  第6章 友だち授業の実際
    【実践事例】

  第7章 障害表明後のフォローアップについて
    1) 当該児童と当該保護者のフォローアップ
    2) クラスメートのフォローアップ

  第8章 自己権利擁護の力を育む
    1) めざすのは、自己権利擁護(セルフアドボカシー)の力を育てること
    2) 成長にともなう障害表明のあり方や開示する対象者の変化
    3) ハードディスクロージャー(診断名を公表する方法)
    4) ソフトディスクロージャー(診断名を伝えず、特性のみを伝えるやり方)
    5) 実際の適用場面では
    6) 自己権利擁護スキルとアサーショントレーニング


第2部 友だち理解プログラム
     子どもたちに「人と人との違い」について理解を促進し、共感性を育む教育
        キャサリン・フェハティ

   日本の先生方へ
   プランA基本形   「友だち理解プログラム(∪FP)」の導入
   プランBオプション  特別支援教室やその在籍児童について紹介する
   プランCオプション  クラスメートを理解しよう

 「友だち理解プログラム」の指導案

  A.「友だちを理解する」導入 一般論による基本形
    Part1 能力
    Part2  体験学習
    Part3 言語理解のデモンストレーションを観察する「食事の準備を整えなさい」
  プランBオプション 特別支援学級とその在籍児童について紹介する
  プランCオプション 特定の(自閉症スペクトラムのある)クラスメートについて理解する

 ■児童書の活用

  「友だち理解プログラム」準備物リストと体験学習の解説
    ① 手先の巧緻性に関する体験学習
    ② 視覚のちがいに関する体験学習
    ③ 触覚等の感覚受容のちがいに関する体験学習
    ④ 注意集中や聴覚刺激のちがいに関する体験学習


第3部 シックスセンスⅡ  キャロル・グレイ

   目的
   本時の目標
   教材
   所要時間
   特記事項
   導入部
   五感について学ぶ
   相手の視点に立つことと六番目の感覚(シックスセンス)
   感覚について相手の視点に立つ体験学習
   認知のちがいについて相手の視点に立つ体験学習
   感情についての相手の視点に立つ体験学習
   社交的な感覚(シックスセンス)に障害があるということは、どういうことだろう?
   私たちは同級生として、どんな手助けができるのでしょうか?
   まとめ

 授業案「シックスセンスⅡ」について よくある質問とその答え


総論  服巻智子

『 記者が発達障害児の父となったら 』

太田 康夫:著  朝日新聞出版  定価:2000円+税(2025.5)

 

           私のお薦め度:★★★★★

世の中に自閉症への理解を広めたいと願ったとき、政治家やマスメディアの中に関係者がいてくれると、それは大きな力となりますね。
中でもマスコミは広く一般市民を読者・視聴者としているだけにその影響
力は大きいです。古くは、毎日新聞の野澤和弘氏、RKB毎日放送の神戸金史氏、読売新聞の梅崎正直氏・・・などなど、そして今回紹介するのは、朝日新聞の太田康夫氏、いずれも自閉症のお子さんを育ててきたパパです。
もちろん、普通(?)の記者の中にも、発達障害や自閉症に理解のある方もいらっしゃいます。
でも、自閉症児の父とは、その熱量が違うように思われます。なにしろパパにとっては、他人事ではないのです。
我が子が、将来この社会で幸せに生きていくためには、周囲の理解が欠かせません。それが我が事として身にしみて感じているだけに、企画にも、持つ筆にも力が込められています。
私たちが、セミナーやチラシでいくら呼びかけても、届く先は自閉症の関係者に限られることが多く、一般の方にまではなかなか届きません。その点、不特定多数の一般読者に向けて発信できるマスメディア関係者の方は貴重な存在なのです。・・と、いう訳で本書の紹介に入ります。

著者の太田氏のご長男は20代、大学を卒業後、現在は就労に向けて準備中だそうです。
その生い立ちから、子育ての様子などは序章「インクルーシブ教育で友だち・学校・地域に支えられて」で紹介されています。ただその様子は章のタイトルにもあるように、小学校時代のインクルーシブ教育の紹介が中心で、また個人情報に配慮されてか、お名前も写真も載せておられないので、本書の主題は、第1部から始まる取材で知り合った各地の自閉スペクトラム症の本人やそのご家族の話ということになります。太田氏が企画して2008年からスタートさせた朝日新聞生活面のシリーズ「発達障害とともに」で出会った方々などです。
それぞれのインタビューなどの中で、太田さんの長男さんの様子も時々触れられています。やはり根っこには発達障害児の父としての思いがあふれてくるのでしょう。


さて、最初に登場するのは、以前の会報258号(2019.10)で紹介した「自閉症という知性」(池上英子:著)にも登場した大阪のギタリスト(現在は病院の薬剤部に勤務)高橋紗都さんです。
その中で、お母さんの尚美さんが紗都さんにアスペルガー症候群の告知をする言葉と、それを聞いた紗都さん(取材当時11歳)の思いです。

尚美さん  やっぱり、さっちゃんと同じようなことで困っている子どもは、他にもたくさんいてるんやて。それは日本の中だけではなくて、他の国にも、世界中にたくさんいる。 ・・・・
何でアスペルガー症候群ていう名前がついているかと言うとな、世界中にいる、さっちゃんと同じような、しんどいことや困ることをもった子どもに、過ごしやすい方法を伝えるためには、何か名前がなかったら伝えにくいし、研究や勉強がしにくい、だから一応名前がついているねん。
で、 一番大事なことは、アスペルガー症候群という名前は、どうでもよくて、過ごしやすい方法がわかることやねん。
だから、 一応名前はついているけど、それは大事なことでも気にすることでもないわ、どっちかというとどうでもいいこと。 一番大事なんは、アスペルガーさんが最初に見つけて、そのあともいろんな人が研究してくれているおかげで、過ごしやすい方法がたくさんわかってきていること、それを参考にして、自分が過ごしやすくなることやと思うわ。


紗都さん  アスペルガー症候群と言われたとき、「私のような人たちのことを、アスペルガー症候群というみたいだなぁ~」と思いました。
アスペルガー症候群と言われても、「私の特性に名前がついただけ。私は私」という感じで、私の家族が「うわわ持ち」(私のような特性を持つている人のことを「うわわ持ちの人」と言っていた)と言っていたのは、アスペルガー症候群の特性でもあったのかと思いました。
そして、そう思ったときに頭にうかんだのが、お母さんが私にアスペルガー症候群と伝えるときに言ってぃた「(アスペルガー症候群などで)そんな困った子とか、しんどい子をどうやったら楽にできるか考えてくれてる人がおんねん」という一言でした。
このとき、私は「ホォ~。そんなんしてどうやったら楽になれるか考えてくれる人がいてんねんやったら、その考えてくれてる「うわわ大王様
(注:専門医・研究家)が、楽になる方法を考えてくれるかもしれない」と思いました。
こんな感じでアスペルガー症候群と診断されて、どちらかというと良かったなぁ~と思いました。


そんな理解のある両親や担任の先生のもとで、無理をすることなく育ち、理解ある職場にも恵まれ、紗都さんは27歳の「今が一番楽しい」と筆者に即答されています。
両親も、これからも紗都さんらしく生きていってほしいと願っていますが、心配もあるそうです。

もちろん、紗都さんはギターを演奏することは大好きだ。
だが、プロとして活動するとなると、さまざまな人たちとの関わりが生まれ、演奏のために各地へ赴かなければならない。
紗都さんにとって、そうした行動には大きなエネルギーが必要だ。
これまでコンクールや発表会のために、東京などに移動することを負担に感じてきた。演奏はしたいけれど、ギターを仕事にすることには体調面で不安がある。
環境の変化が多くなりがちな音楽の仕事よりも、安定した環境の中で日々コツコツと積み重ねる仕事が自分自身に合っている。そうした仕事のほうが長い日で考えたときには、より自分の力を発揮できる――。そう考えて、自身が働きやすい環境の職場を探すことにした。
2021年夏ごろから、ハローワークで「障害者枠」での求人情報を当たった。


そうして見つけたのが前述の病院の健診センターの薬剤部だったわけです。障害に理解のある職場で安心して働いている紗都さんですが、最後に書かれているように両親の不安は「障害者枠」の就労であること。
収入は一人で暮らしていくには十分とは言えず、安心して暮らせるだけの社会的な保障が整っていないことです。障害者を取り巻く環境については、障害への理解ももちろん必要ですが、経済的保障も大切になってきます。財務省さんは、ことあるごとに「財源はどうする、財源が必要」とおっしゃいますが・・・・ぜひとも、ここでこそ“合理的配慮”をお願いしたいですね。

今回は、第1部のそれも第1章の高橋紗都さんの紹介だけで、ページが終わってしまいましたが、本書では他にも魅力的で精一杯いきておられる当事者の方やご家族、支援者の方々が登場します。

発達障害の方の思いを歌にする、シンガーソングライターのyuikaさん、自らを「森の人」と称して(発達障害のない人は「里の人」)本来地続きの差別の川に橋をかけようとするくすのきゆりさん、「フレンドリーなイタリア人」のような満面の笑顔で、述べ7800人以上の発達障害児へのヘアカット「スマイルカット」を続ける赤松隆滋さん、等々・・・他にもたくさんの方を太田さんが紹介されています。

現役の記者の方だけあって、とても読みやすい文章で、また新聞記事には載せられなかった、太田さん自身の父としての我が子への思いも各章にさりげなく書かれており、まさに太田さんでなければ書けな
かった1冊だと思います。
最後に、太田さんの同僚でこの本の発行に尽力された、同じく発達障害のある娘さんを育てられておられる朝日新聞出版書籍編集部の上坊真果さんの言葉を紹介して、今月のお薦めの言葉とします。

「障害という、下ろすことのできないリュックを娘に背負わせて生んでしまった、という気持ちがある」と上坊さんは言う。
親は、子どもが背負っているそのリュックを代わりに持ってあげることはできない。先に人生を終える親は、子どもの一生の間、ずっと一緒に歩き続けることもできない。
せめて、子どもが背負うリュックの中身を見てあげて、荷物を整理し、下ろせるものは下ろしてあげたい。 一生持っていかなければならない荷物があれば、親がいなくなったあともそれを背負い続けることができるじょうぶな心を育ててあげたい――。上坊さんはそう話す。
整理とは、親が子どもの特性をよく理解すること。「下ろせるもの」は、教育や療育、あるいは周囲の環境を整える中で、長女がより生きやすくなるよう努めること。
筆算を習得することよりも、電卓で計算できるようにする。
書き順はこだわらず、まずは読める文字を書けるようにする。
このように、長女ができることとできないことを親が理解し、学校が進める教え方と合致していなくても、長女の将来にとって必要な教育を見極めてあげること。それも、荷物を下ろしてあげることにつながる。
長女が自分自身を好きでいてほしいと思い、ほめて育ててきた。
ありのままの自分を大切にできる心があれば、下ろせない荷物を背負って歩き続けられると信じているからだ。

 

                 (「育てる会会報 326号」(2025.6 より)

 

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目次

  はじめに

序章 インクルーシブ教育で友だち・学校・地域に支えられて
     ― 私と家族のこと(大阪府)

第1部 当事者のあゆみを見つめ続けて

  第1章 内面の扉開いた「うわわ手帳」 ― 高橋紗都さんと両親(大阪府)
  第2章 自分の凸凹に合う環境をデザインする ― シンガー・ソングライター yulkaさんの歌(兵庫県)
  第3章 親として“当事者”として ― 家族みんなが特性を持つくすのきゆりさん(関西地方)
  第4章 得意なことは、人生を変えるだろうか ― 小野浩太さんと両親(青森県)

第2部 社会とのつながりを作り続ける人たち

  第1章 「わかつて」だけでは十分じゃない ― 藤田心優さんと当事者会「シエラ」の取り組み(熊本県)
  第2章 誰にとってもやさしい町を作り続ける ― NPO法人「えぇ町つくり隊」の挑戦(岩手県)
  第3章 当たり前に美容院に来られる子たちを増やしたい ― 美容師・赤松隆滋さん(京都府)

第3部 親として何ができるだろう

  第1章 ありのままの自分、大切にできる心を ― 朝日新聞出版・上坊真果さん(東京都)
  第2章 伝えたい言葉は「アイラブユー」
         ― 可能性を掘り起こす技術を開発した母・久保由美さん(アメリカ・カリフォルニア州)

終章  とても大切な何か

  おわりに

 

『 発達障害 特性のある子ども 通常学級で成長させる 』


菊池 省三/是永 かな子:著 喜楽研 定価:1800円+税 (2025.3)

 

                    私のお薦め度:★★★★☆

本年度、赤磐市との共同主催で行なっている「発達障害 夜間連続講座」の講師をお願いしている菊池省三先生と、高知大学教授の是永かな子先生の共著による最新刊です。
タイトルにあるように、今回は“通常学級”で学ぶ特性のある子どもへの指導の指針を書かれた本となっています。

菊池先生の実践は「ほめ言葉のシャワー」「成長ノート」「価値語」「白い黒板」などに代表されるように、言葉を大切にして「ほめて、認めて、はげます」が基本になっています。
もちろん、通常学級の全員に向けての授業ですので、マジョリティーは特性を持たない子たちになるのですが、クラスには必ず一人くらいは特性のある「気になる子」がいると思います。なにしろ、令和4年の文科省の調査でも「学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒数の割合」が小中学校では8.8%という推定値がでています。ちなみに余談になりますが、前回平成24年の調査では6.5%だったそうなので、ますます増えてきているようです。これだと一人どころではなく、35人学級だと3~4人はクラスに支援を必要とする子がいることになりますね。

それはともかく、クラスに「ひとりぼっちをつくらない」というのが菊池先生のクラスなので、特性のある子もない子も、全員を巻き込んでの授業です。
それでは、その中の「ほめ言葉のシャワー」についてのポイントの解説です。

「子どもはほめられた方向に成長する」という言葉があります。
また、「ほめ合う集団は、明るく自信にあふれている」という言葉もあります。
教室の中の「気になる子」や「気になる学級」は、私の経験から言えることは、ほめられた経験やほめ合う経験が少ないということです。
ほめ言葉のシャワーとは、毎日1人の子をみんなでほめ合う活動です。「発達障害特性のある子ども」も全員からほめられる体験をします。活動を通して、自分のよさや友達のよさを自覚し始めます。
「みんなからほめてもらった」「友達をほめることができた」という経験は、子どもたちの大きな自信になります。どの子も教室の中に居場所を感じます。教室の中に安心感が広がります。
家庭でも、「今日はお母さんをほめる日」などと決めて取り組めます。よさを見つけ合うことが自然にできるようになります。


よく、「子どもは褒めて育てましょう」というセミナーなどで、「じゃあ参加者の方同士で、お互い褒め合ってみましょう」などというロールプレイをさせられることがありますが、だいたいみんな照れくさがって、セミナーが終わればそれっきり・・・になってしまうのではないでしょうか?
その点「ほめ言葉のシャワー」では、毎日一人の子をクラス全員が、それこそシャワーのように褒めるのです。小学生ですから、最初は褒めるのが苦手で困る子もいるでしょう。でも周りのほめ上手な子を見て、どこを見て褒めればいいのかに気づき、お互いのいいところを探すようになりますね。クラスがまとまるワケです。セミナーでのロールプレイとは違って、一日30個を超える「ほめ言葉」が飛び交い、それが毎日続けば、みんな褒められて成長していくことになるのですね。

今年の最初の菊池先生の連続講座の中で、実際の「ほめ言葉のシャワー」の様子をビデオで見せていただきましたが、褒めている子どもたちもみんな明るくて、褒められている子どもも特性のあるなしに関わらず、ちょっぴり照れくさそうで、でも嬉しそうでした。

本書の構成は、前半菊池実践のポイントを説明したあと、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の各章に分けて、それぞれのタイプ別事例と、それに対する菊池先生の教師への支援方法と、是永先生の家庭へのアドバイスが見開き2ページで書かれています。副題では「学級担任の支援と家庭へのアドバイス」となっていますが、菊池先生の教師の支援が二つ提案されているのに対し、是永先生の家庭へのアドバイスは一つですので、どちらかというと学校の先生方に読んでいただきたい本のように思えます。

それはそうですね。ADHD、ASD、LD/SLDとそれぞれ違った特性を持ち、その中でも一人ひとり大きく違っているのが発達障害をもつ子ども達ですね。先生はそんないろんなタイプの生徒と向き合っていかなければならないので、本書は大いに役にたつと思います。
一方で、家庭においては、ただ一人の我が子、その子の特性にあった支援を必要としているので、本書のいろんな事例の中で我が子に役立つアドバイスは限られてくるのでしょう。

もちろん、現れる特性は違っても、同じ自閉スペクトラム症の子ども達ですので、共通に役立つアドバイスもあります。たとえば、「かみ合った話し合いや対話が苦手」なASD児の家庭への是永先生からのアドバイスです。

「話し合いが「ニューアイデア」につながって楽しい、を目指そう」
話したくない赤ちゃんは基本的にはいないので、対話の「苦手意識」はそれまでの失敗の積み重ねだと考えられます。まずは対話の「型」が明示された環境でパターンを学び、徐々に内容を発展させることで「成功体験」を積み重ねていきましよう。
話し合いをするためには他人の話も聞くことが必要という意識も生まれてくるでしょう。お互いの言葉のやりとりによって、より世界が広がることを意図的に伝えましょう。自分が話すために聞く、聞き合うことで対話が楽しくなっていくという経験を通して成長させましよう。


ASDのある赤ちゃんが “話したくない赤ちゃんは基本的にはいない”に該当するか・・・は、さておいて(“基本的”とはいえないのがASDの赤ちゃんかもしれませんが・・・・)、たしかに対話の「型」を作って家庭で練習するのは対話の苦手なASD児の役に立ちそうですね。

とは言え、菊池先生、全国各地で「菊池道場」の道場主として、子ども達のコミュニケーションを育てる実践や、全国の学校で飛び込み授業を年200時間も続けていらっしゃいますが、まだまだその実践に触れられる機会は限られているのが実状でしょう。
本書の初めに紹介されている保護者の方からの手紙の中に「こんな授業を受けられる子供は幸せだと思います」という一節がありました。その方は幸いにも翌年、担任が菊池先生になって救われたそうですが、菊池先生あるいは菊池道場で学ばれた先生に当たるのは、宝くじに当たる以上に幸運なことでしょうね。
でも嘆いてばかりいても前には進めません。そこで私たちにできることを、と今年度菊池先生に連続10回の夜間講座の講師をお願いした次第です。既に講座は始まっていますが、途中参加の方にも、第1回からの講義の視聴はご案内していますので、どうぞこの機会に受講をお願いします。

と、いう訳で、本書は特に学校の先生方にお薦めの1冊です。講座の受講生のみなさんには、ぜひ手許に置いて菊池先生の講義を視聴してくださいね。

                         (「育てる会会報 325号」(2025.5) より)

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目次

    発達障害特性のある子どもを通常学級で成長させる菊池実践 (菊池 省三)
    /そのときの子どもたちの思い (是永 かな子)

1.ADHD(注意欠如・多動性障害) 特性のある子ども

    ADHDの特性

  ① 授業中、勝手に立ち歩く
  ② 教師の指示を聞きもらす
  ③ 友達と些細なことですでにぶつかる
  ④ 指示や約束をすくに破ってしまう
  ⑤ 突然、奇声や大声を出す
  ⑥ 気に入らないとすぐにキレる
  ⑦ 自分の考えや思いを上手く伝えることができない
  ⑧ 同じ注意を何度も受ける
  ⑨ 学校に行きたがらない
  ⑩ 自分から謝ることができない
  ⑪ 自分のすべきことを最後までできない
  ⑫ 「自分はできない」と自信をなくしてしまう
  ⑬ 自分の言動をふり返って反省することが苦手
  ⑭ 指示に対して反抗したり、受け入れたりできない
  ⑮ 友達に対して高圧的な態度をとる

2.ASD(自閉スペクトラム症) 特性のある子ども 

    ASDの特性 

  ① 人への興味が弱く、目を見て関われない
  ② 教師や友達の言葉にすぐ反応してしまう
  ③ 友達の意見を聞けない、聞き分けられない
  ④ 周りが気になって落ち着かない
  ⑤ 身の回りの整理ができない
  ⑥ 発言は文章を書くよリイラストの方が得意
  ⑦ 学習の見通しが持てない
  ⑧ 周りの理解を得られにくい言動をしてしまう
    ⑨ 相手のよさに気づかない
  ⑩ その場の空気がわからない
  ⑪ こだわりが強く、周りから疎外されがち
  ⑫ 相手の思いを読み取るのが苦手
  ⑬ かみ合った話し合いや対話が苦手
  ⑭ マイペース過ぎる
  ⑮ 授業中、ぼんやりとしたり寝ていたりする

3.LD/SLD(学習障害/限局性学習症) 特性のある子ども

    LD/SLDの特性

  ① 人前に出ると固まってしまう
  ② 筋道を立てて話すことが苦手
  ③ 聞いたことをすぐに忘れる
  ④ 説明を聞いても理解できない
  ⑤ スラスラ文章が読めない
  ⑥ 勝手な文章の読み方をする
  ⑦ 自分の意見が持てない
  ⑧ 発表に自信が持てない
  ⑨ 漢字や文字を正しく書けない
  ⑩ まとまった文章が書けない
  ⑪ 作文では平仮名ばかりを使ってしまう
  ⑫ あること(例:わり算)が極端に苦手
  ⑬ 外国にルーツがありコミュニケーションが不十分

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