またオリジナル漢詩を詠んだのでご紹介したいと思います。
今回私が詠んだ漢詩は七言絶句仄起式になります。
以前に詠んだ七言絶句平起式の漢詩日記も貼っておきますので、
もしよろしければご覧くださいませ。
【漢詩】愁苦帰途【オリジナル】 | TOSHI's diary (ameblo.jp)
ここで仄起式の場合だと漢字がどう並ぶのか記しておきます。
仄声(上声、去声、入声)、平声が混ざってはならないという規則があります。
起・仄仄平平仄仄平(韻)
承・平平仄仄仄平平(韻)
転・平平仄仄平平仄
結・仄仄平平仄仄平(韻)
そしてもう一つ考えてみたのが、繁体中国語で読んでも意味が通じるようにした点です。
本題に入る前の話が少し長くなってしまいますが、どうかお付き合いください。
この写真は台湾の大龍峒保安宮の入り口の写真です。
すぐ手前の看板に請勿停車と書いてあります。
「車を停めないでください」という意味で、お気づきかと思いますが、
こちらは漢文がそのままの形で残っている良い例です。
書き下すと請ふ車を停むること勿れとなりますね。
他にも看板などを見ていると、パッと見て書き下し文にできる文章をよく見かけます。
特に古い文章語(日本語の文語文に当たる?)ほどその傾向が強いような気がします。
あくまで個人的な体感ですが。
ついでなので大龍峒保安宮に行った時の日記も貼っておきます。
もしよろしければご覧くださいませ。
【台灣】大龍峒保安宮! | TOSHI's diary (ameblo.jp)
ここで「もしかして中国語で読める漢詩も作れるんじゃね?」
と思った次第で作ったのが今回の漢詩になります。
唐代の漢詩の語彙且つ中国語の文語文の単語を、平仄を区別した上で並べてみました。
説明がややこしくて申し訳ないですが、
つまりは七言絶句仄起式であり中国語としても読める漢詩に挑んでみたということです。
それでは始めていきましょう。
【白文】
旅途
邁進他郷嚮際涯
因爲匪井底之鼃
登高可以臨遼闊
在旅途應只管徍
平仄と押韻が合っているかここで照らし合わせてみましょう。
邁(去)進(去)他(平)郷(平、去)嚮(去)際(去)涯(平) 涯
因(平)爲(平)匪(上)井(上)底(上)之(平)鼃(平) 鼃
登(平)高(平)可(上)以(上)臨(平、去)遼(平)闊(入)
在(上、去)旅(上)途(平)應(平、去)只(上、平)管(上)徍(平) 徍
漢字の音を表す部首が同じ(ここでは「圭」)だと、押韻の母音が揃いやすいと判明。
もちろん例外もありますので一概には言えませんが。
【訓読文】
【書き下し文】
旅途
他郷を邁め進みて際涯に嚮ふ
因りて井底の鼃に匪ざる爲に
高きに登らば以て遼闊なるを臨むべし
旅途に在りて應に只管徍かむとすべし
【現代語訳(伝えたかったこと)】
旅路
見知らぬ土地をどんどん進んで地の果てを目指す。
限られた場所に閉じこもって同じものばかりを見てなどいられないのだから。
この坂道を越えれば広大な景色を見ることができる。
旅路の途中にあって、ただひたすらに前進あるのみだと思う。
【ピンイン】
旅途
邁進他郷嚮際涯
因爲匪井底之鼃
登高可以臨遼闊
在旅途應只管徍
この記事を公開する前に、実際に中国と台湾の方に読んでもらいました。
大陸の方には、ネットで調べて簡体字に変換した白文をお見せしています。
結論から言うと、ほぼ全体的に伝えたかったことは通じました。
ただ、両者ともに一文字だけ指摘がありました。
・徍
どちらからも「こんな文字は知らん!」と言われました。
まあ私自身この文字を使ったのは初めてで、この漢詩を詠むまで知りませんでしたが。
日常的に使われる文字ではないので仕方がありません。
一応辞書には日本語と中国語ともに載っている文字ではあります。
徍 - Wiktionary, the free dictionary
現代においての用途としては日中台ともに「往」の字に統一されて、
往の字の読みは「おう(わう)」「wǎng(ワン)」です。
なぜわざわざこの文字「徍」を選んだかというと、
七言絶句の押韻は平声のみで母音を統一するというルールがあるためです。
この文字を用いる他に選択肢がありませんでした。
いやあ、中国語でも読める漢詩を作るというのは実に難しいです。
ちょっと無茶な挑戦だったかもしれません。
ただ私自身はこういう創作が好きなので、また挑んでみたいと思います。
今回は以上になります。
最後までお読みくださりありがとうございました。
今後もオリジナル漢詩を作ることがあると思うので、また見ていただければ幸いです。
ではでは皆さんまたお会いしましょう。