クリプトコッカス症(cryptococcosis)は、Cryptococcus属に分類される酵母様菌による感染症です。
自然界では世界中に見られますが、特に、湿潤な気候で温暖な土壌や鳩の糞そして植物の表面などに存在します。
クリプトコッカス症では様々な症状が見られます。
・くしゃみや粘液膿性の鼻汁
・血の混じった鼻汁
・元気消失
・食欲の低下
・以前は見られなかったいびきをかくようになった
・顔面(特に鼻の周囲)や頭部、肉球などに硬いしこり(表面が潰瘍化したり、穴が開いて膿が出てきたり)
といった呼吸器・皮膚病変など。
さらに、クリプトコッカスが中枢神経系に感染すると
痙攣(けいれん)や旋回、運動失調などの神経症状が見られます。
また、中枢神経を介して眼の組織にまで感染が及ぶと、
視神経炎や網膜剥離、前ブドウ膜炎などを起こし、失明することもあります。
クリプトコッカス症は、クリプトコッカスという真菌を、鼻や口から吸い込むことで感染します。
この真菌は特にハトなどの糞便に多く存在するため、
ハトによって様々な場所に運ばれ、ハトの糞便に汚染された周囲の土壌中や空気中に存在しています。
このため、クリプトコッカスに汚染された場所で過ごすことの多い猫では、感染の機会が多く、発症しやすくなります。
クリプトコッカス感染は一般的に免疫が抑制された猫ちゃんで見られ、人にも感染することがあるので注意が必要です。
診断には病変の一部をとって顕微鏡で観察するか、真菌培養が必要です。
染色液に染色されない莢膜という特徴的な構造を持っています。
治療には、アムホテリシンB、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾールなどの抗真菌剤の投与が行われます。
治療に対する反応は様々で、特に神経症状が現れている場合や
エイズ・白血病感染により免疫が抑制されている場合には治療が難しい場合があります。
今回の子はかなり前から鼻水、目脂が止まらないという主訴でいらっしゃいました。
鼻炎の治療をしていても、よくなったり、悪化したりを繰り返していました。
猫ちゃんの経過の長い鼻水の原因としては
・アレルギー性鼻炎
・感染症(ウイルス、細菌、真菌)
・腫瘍
・異物(花や草の種など)
・歯周病からの鼻への波及
などたくさん考えられます。
鼻にしこりができていたのでレントゲンを撮りました。
骨へ悪さをしていないようです。
歯周病からの波及もなさそうです。
骨を溶かしていたりしていると腫瘍・重度の感染症が疑われます。
麻酔下にてしこりの一部と鼻の内側の奥の細胞をストローでとり顕微鏡で観察しました。
検査の結果クリプトコッカスが大量にいました。
免疫力の低下している原因があるかもしれないので血液検査・エイズ白血病の検査をしましたが問題ありませんでした。
今後は鼻炎の治療に抗真菌剤を追加します。
比較的副作用の少ないイトラコナゾールという薬を始めました。
真菌は強い菌ですので治療には最低でも2・3ヶ月はかかると思います。
はやく良くなることを祈っております。
鼻の変形もなくなり、鼻水が出なくなってきました。
それに伴い食欲も上がってきまして、体重も増えてきました。
猫ちゃんは鼻が詰まっていると食欲がなくなる子が多いのです。
引き続き内服継続し、クリプトコッカスをやっつけていきます。