アキクサインコのハルの独り言
「まだかな?まだかな?」
「ん~~まだかな?」
「もうね、ずっと出てないの」
「飛びたいな、まだかな〜」
1年6か月前の話です。
九州に住む母が緊急入院をしたのです。
初期の認知症だった父は一人ぼっちになりました。
父の介護をするため、10日間の帰郷をした私。
ところが九州に着いた途端、大きな事件がありました。
フェリーを使った為、自宅を出た翌日の晩、
文鳥のシルバがアキクサインコのチャチャに舌を咬みつかれ大出血。
言い訳をすれば、私が居れば絶対に起こらなかった。
気性の荒いチャチャの抑えや発情対象になっていたのは私でした。
私が居なくなったことで、精神的に不安定になり寄り添う人間もいない、そしてシルバに襲い掛かったのです。
電話を受けた瞬間、神奈川を離れたことを酷く後悔しました。
夜でもあるし、鳥専門病院は対応不可。
家人へは圧迫による止血を指示しました。
また強制給餌も準備してもらいました。
とにかく、出血を止めるのが最優先です。
幸いにも30~40分ほどで出血は完全に止まりました。
しかし、すぐに水を飲ませてしまった家人。
なんて馬鹿なことをしたのか!!
出血がまた始まりました。
自己嫌悪しかない。
可哀そうだから水を飲ませるという行為は自分の過失をなぐさめているだけです。
どういう行為がシルバを助けるのか考えれば、自ずと結果は見えてくるはずです。
正直に言えば、鳥に対してのイレギュラーの対応能力は家人にはありません。
その分、私に頼ってくれれば良いのだけど・・・
鳥の怪我は治りが早いのですが、出血がそれなりにあったので、時間を置かず水を飲ませると傷口が開くのは当たり前です。
強制給餌は唾液が出てくるので断念しました。
その後は23時まで様子を見て消灯。
エサは食べていませんが、半日や1日食べなくても死ぬことはありません、怪我の場合は食欲の回復も早いので、傷の回復を優先します(口の怪我なので当然の対応です)
翌朝、まずは水を少し飲んでもらい、出血が無いことを確認して餌も食べてもらいました。
その後は水とエサの撤去を繰り返し、出血の有無を継続確認後、問題が無かったので午前10時以降は通常通りセットしたままです。
シルバの怪我は問題ないレベルになりましたが、同時放鳥は中止。
私が居ないことで、鳥たちの放鳥時間は1日1~2時間に激減しました。
通常の平均放鳥時間は当時5~6時間だったので、鳥たちにとっては放鳥は無いに等しいと感じられたはずです。
そんな中、大きくダメージを受けたのはアキクサインコのハル。
冒頭の文章のように、毎日毎日、放鳥を待っていたはずです。
仕舞には精神的に病んで、毛引きを始めました。
尾脂腺の少し上の羽毛をひたすら抜くのです。
私が帰宅した時は、地肌が見えていました。
飼い主の労働環境によっては仕方ないと思うかも知れませんが、私的には大きくNG。
申し訳ない。
ハルは頭のいい個体だという話を何度もしていますが、逆に言えば繊細だから注意が必要だったのです。
文鳥のシルバは7年前、家人が閉めたドアに挟まれて、クチバシの殆どを失いました。
2か月間、強制給餌で命を繋ぎましたが、その間、うつ状態が続きました。
1日中、無気力で強制給餌でエサをもらい、その他の時間は殆ど寝ていました。
何も望まない、何もしない、鳴かない、ただ生きているだけ。
クチバシを失くしたという事実が精神を壊したのだと思っています。
その後、自力でエサを食べるようになった途端、復活しましたが・・・・
シルバ
「何だか眠くなってきたぜ」
上記はよい例ではないけれど、小鳥って人間が思うより複雑で頭のいい生き物です。
愛鳥へちょっと待っててね、なんていうでしょ。
もちろん、自分からカゴの外に出られないので、待つしかないのだけど・・・
当家のハルに関して言えば、待つことは大きなストレス。
ちんまりと水入れの前で待機しているのは、精一杯の出たいアピールです。
出たくない時は上の止まり木でまったりします。
当家の暮らすようになった3羽の鳥たち。
よく観察すると、ただ鳴いて飛んでるだけではない。
心の深いところで葛藤があったり、諦めがあったり、安堵があったり。
そういう部分も飼い主として見て行きたいと思ったりもします。
ちなみにハルの毛引きは今現在、ほぼ治っています。
費やした時間は1年6か月。
心を治すって人間でも同じですが、長い時間がかかります。
だから、壊さないよう努める必要があります。