「ぅああぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
ただひとり、手を挙げなかった椎名 琢磨が奇声をあげた。
「私だって同じですよ、だって!!」「大切なひとを助けるためだからといって、なぜ自分の命を懸けなきゃならないんですか!?」「私はただ、平穏無事に毎日を過ごせればそれで良かったんだ!!社会人になって、エリートサラリーマンと呼ばれるようになったのだって、マニュアル通りに業務をこなしていたら他人と争う必要がないくらいに仕事ができる人間に仕立て上げられていたんだ!!そもそも私には初めから強い意志なんてなかったんだ!!」
両肩を、いや全身を震わせ、琢磨はうつむいた顔を上げると勢い良くテーブルに拳を打ちつけた。「ちくしょう!!どうしたら良いんだよ!!自分より大切な命なんてあるのかよ!?アンタら、どうかしてるよ。そんなの、オレには無理だ、他人のために闘うなんてできない…、怖い…」
「そうか。きみの気持ちはよくわかったよ。私からは何も言うまい」
いつの間にか、力水教授がカウンターの奥から顔を出していた。
「せっかく手作りのシフォンケーキを焼いたんだが、皆で仲良く食べる空気ではないようだな」
「ちょっと待ってください。まだ結論が出たわけでは―――、」
家中 ホコリがふたりの間に割って入った。「みんなでシフォンケーキを食べる時間くらいあるでしょう?今度はアタシがコーヒーを淹れますからちょっと、その、落ち着きましょうよ。ね?」
ホコリがコーヒーを淹れにキッチンへ向かおうとしたそのとき、琢磨はその場を飛び出していた。
「あっ…」
みんなが動けずにいる中で、唯一、ピンクのヘルメットを抱えて琢磨を追いかけたのは赤石 蒼だった。