走る早さには自信があった。
「待ってください、椎名さん!!」
階段の踊り場で琢磨に追いつくと、すぐにピンクのヘルメットを手渡した。「あなたが死んじゃったら元も子もないですよ」
「いやすまない。けどちょっと独りにしてくれないか?それに…、」琢磨はぼくの顔を凝視しながら、「赤石くんこそヘルメットをせずに私を追いかけて来たのかい?
気付くとぼくは自分のヘルメットのことなど忘れて夢中で飛び出してきてしまったようだ。「ホントだ。椎名さんのことしか頭になくて、知らずに命懸けになっちゃいました。どうしよ、戻らなくちゃ…」
すると今度はブルーとイエローと、赤いヘルメットを抱えたグリーンが、ぼくたちを追いかけて来てくれた。
「オレはあんたより年下だし、こんなこと言いたくないけど…、あんたアホか!!自分のヘルメット忘れてひとのヘルメット届けに行くなんて、アホ以外の何者でもねーよ」
そういうグリーンの声は笑っていた。
「この上ないアホだよね」イエローが可笑しそうに笑いながら、ぼくが慌ててかぶったヘルメットをコンコンと叩いた。
ブルーはなぜか悔しがっていた。「仲間の救助に遅れをとったとあっては消防士の名が泣くぜ」
ぼくは階段を2段飛ばしで上ってきた息切れをなんとか整えると、椎名 琢磨にもう一度向き直り、言った。
「あなたはこの5人の中の誰よりも、強い」