奥能登の伝統産業として輪島塗の技術 | to-be-physically-activeのブログ

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 今回の震災で深刻な被害を受けた奥能登地方。いまだにライフラインや幹線道路の復旧の見込みすら立たない状況のようです。能登半島の先端部に位置する輪島市から珠洲市にかけては,かつては北前航路の中継地として栄えた歴史があります。特に輪島は,中世には「親ノ湊」と呼ばれ,日本を代表する「三津七湊(さんしんしちそう)」(港湾都市)の一つとして発展してきました。江戸時代の中期以降は,室町時代から発展してきた地場産業である輪島塗の技法を生かした食器の生産地として知られるようになりました。

 日南彩漆堂の「輪島塗」略史によれば,輪島塗の特色は堅牢な下地づくりが特徴のようです。地元で産出する豊富な珪藻土の焼成粉末(地の粉)を漆に混ぜて木地の上に塗りこめる「本堅地の技法」のことで,珪藻土の特徴である多孔質の基材に十分に漆液を染み込ませて繊細で滑らかな塗りを実現させました。江戸後期には堅牢な漆地に沈金を施す技法を発達させ,近代以降は華麗な蒔絵技法が導入されて絢爛華麗な装飾漆器を産み出してきました。木地師,塗り師,蒔絵師など分業制による輪島塗の生産工程の効率化やエキスパートシステムも特徴で,それぞれの技術レベルを向上させながら生活雑器から美術工芸品に至るまでさまざまなジャンルの作品を世に送り出してきました。

 個人的に輪島塗の製品で愛用しているのは蒔絵をほどこした文鎮だけですが,漆黒の塗りの下地に赤漆のラインが透けて見える美しい作品です。

 今回の震災の影響で地場産業にも大きなダメージが加わったかもしれませんが,輪島塗の食器や工芸品を買い求めることによっても復興の応援になるかもしれません。