星組大劇場公演『ディミトリ -曙光に散る,紫の花-』,メガファンタジー『JAGUAR BEAT -ジャガービート-』を12月5日と8日の2回観劇することができました。特に『ディミトリ』は原作である『斜陽の国のルスダン』(並木陽・作,星海社)をあらかじめ読んでいたので,どのような形でこの悲劇的な愛の物語が舞台化されるのか楽しみにしていました。ルスダン女王を演じる舞空瞳さんと王配ディミトリ役の礼真琴さんの丁寧なお芝居によって,原作のテイストに忠実な宝塚作品に昇華されていたと思います。楽曲やジョージアンダンスも目を楽しませてくれました。出演場面は限られていましたが,ルスダンの兄でありディミトリも敬愛する先王ギオルギ(綺城ひか理さん)と内縁の妻・バテシバ(有沙瞳さん)の夫婦愛も繊細に描かれていたと思います。
原作にも書かれていますが,ギオルギ王がバテシバのことをディミトリに語った言葉が象徴的でした。すなわち,
「愛するということは,いつも傍にいて一緒に笑ったり泣いたりすることだと思っていた。だが,多分それだけではないのだと思う。愛すればこそ,敢えて離れて生きるということもあるのだ」
この言葉が暗示するように,祖国ジョージアの危急存亡の戦いの中で,ルスダンとディミトリは離れ離れになりながらも夫婦の愛を貫き子供達に将来への希望を託そうと命を賭けます。最後は切ない結末でしたが,心に残る余韻はたっぷりとありました。