よるが いちばん ふかくなった とき。

せかいは しずかに いきを とめていました。

だれも しらない その すきまに、

あたらしい とし は うまれます。

あたらしい としは、

まだ なまえの ない

ちいさな ひかりの こども。

きのうでも なく

あしたでも なく

「いま」に たって いました。

「ぼく、なにを すれば いいの?」

ひかりの こどもは

そっと まわりを みわたします。

すると

とおくから

ちいさな こえが きこえました。

それは

よろよろ あるく

ふるい とし。

たくさんの

よろこびと

かなしい しわを かかえていました。

「だいじょうぶ?」

ひかりの こどもは

そっと てを さしだしました。

ふるい としは

にっこり わらって いいました。

「ありがとう。

そろそろ きみに

バトンを わたす じかんだね」

ふるい としは

こどもに

たくさんの ものを

そっと あずけました。

・えがお

・なみだ

・まちがい

・がんばった きおく

「ぜんぶ だいじな ものだよ」

その しゅんかん。

そらが ひらけ、

はつひのでが

ゆっくり のぼります。

ひかりの こどもは

あたらしい とし に

なりました。

あさの まち。

こどもが ねぼけまなこで

まどを あけます。

「おはよう」

その ひとことで

せかいは

すこし あたたかく なりました。

おもちを やく におい。

えがおの「おめでとう」。

しずかな いのり。

あたらしい としは

そっと うなずきます。

「ここから はじめよう」

しっぱい しても いい。

なみだが でても いい。

また あるきだせば いい。

だって

きょうは

いちばん はじめの あさ。

あたらしい としは

みんなの せなかを

そっと おしました。

「だいじょうぶ。

ちゃんと すすんでる」

お正月は

なにかを

がんばる ひじゃ なくて、

ここに いて いい

そう たしかめる ひ。

あたらしい としは

きょうも

あなたの となりに

しずかに います。