あの日、あなたを見かけてから、
なぜか一日中、心が落ち着かなかった。
「どうしてだろう?」
あなたが笑った。ただ、それだけなのに。
胸の奥が、ポンッと小さく跳ねた。
家に帰ってからも、
あなたの笑顔が頭から離れない。
眠ろうとしても, 「また、会えるかな……」
そんなことばかり考えていた。
次に会ったら、話しかけよう。
「こんにちは」 たったそれだけでいい。
そう思っていたのに――
いざ、あなたを目の前にすると、
ドキドキ……
ドキドキ……. 声が出ない。
目が合えば、恥ずかしくて目をそらす。
離れれば、 「もっと話せばよかった」と思う。
恋って、 なんて不思議なんだろう。
日が経つほど、
あなたへの想いは大きくなった。
でも、 「好き」 その一言が言えない。
言ってしまったら、
今までの関係が変わってしまうかもしれない。
断られたら、
もう笑顔を見ることもできないかもしれない。
そう考えると, 怖くなった。
だから私は、
一通の手紙を書くことにした。
机に向かって、何度も書いた。
「好きです」……消した。
「あなたに会えて幸せです」……消した。
「ずっと一緒にいたいです」
……恥ずかしくて、また消した。
紙は、消しゴムの跡だらけになった。
そして最後に、
一番伝えたかった言葉を書いた。
あなたと出会えたこと。
あなたと笑ったこと。
あなたを想って、眠れなかった夜。
あなたに会えるだけで、嬉しかった朝。
その全部が、私の宝物です。
もし、この気持ちが、あなたに届くなら――
私はもう、それだけで幸せです。
でも……
もし、あなたも同じ気持ちなら、
もう一度、私の前で笑ってください。
その笑顔を見たら、私はきっと分かります。
手紙を握りしめて、私はポストの前に立った。
入れるだけなのに、心臓が飛び出しそうだった。
「どうしよう……」 何度も迷った。
でも――えいっ。
手紙は、赤いポストの中へ消えていった。
その瞬間、怖いのに、嬉しかった。
不安なのに、ワクワクした。
そして私は、空を見上げた。
「どうか……届きますように」
次の日。
あなたに会った。いつもの笑顔。
でも今日は、何か違う。
あなたは少し照れながら、小さな封筒を差し出した。
「これ……」手が震えた。
封筒を開ける。
そこには――たった一行。
「僕も、ずっと好きでした。」
胸がいっぱいになった。涙がこぼれた。
あなたも笑った。私も笑った。
二人とも、何も言えなかった。
ただ、
握った手の温かさだけが、
すべてを語っていた。
季節は、何度も何度も巡った。
若かった二人は、いつの間にか年を重ねた。
白い髪。増えたしわ。
少し遅くなった歩幅。
でも――
二人でベンチに座ると、
あの日と同じように心が弾む。
おじいさんが言った。
「覚えてるかい?」おばあさんは笑った。
「何を?」
「最初にもらったラブレター。」
「もちろん。」二人は顔を見合わせた。
そして、あの日のように、少し照れた。
おじいさんは、
ポケットから一枚の紙を取り出した。
「また書いたんだ。」おばあさんが笑う。
「今度は何?」ゆっくり開く。
そこには――
『あなたと出会えて、本当によかった。』
おばあさんの目から、一粒の涙が落ちた。
そして、「私もよ。」
二人は、そっと手を重ねた。
おわりに
言葉にできなかった想いは、
心の中にしまっておくより、
一通のラブレターにして、
届けてみよう。
もしかしたら――
その一枚の手紙が、
誰かの人生を、
もう一度、恋で輝かせるかもしれない。
『ラブレター』
届け、心の奥のきみに――。
