ねえ、きみは夢を 見たことがある?
夜の中じゃなくて、
心の ずっと奥のほう。
たとえば、
「空をとびたい」と思ったり、
「大きな森で暮らしたい」と思ったり、
「世界中の人と 笑い合いたい」と願ったり。
それは、
まだ名前もない ちいさな光。
誰かの胸の奥で ぽっ と灯る。
あるところに、夢を持つ子がいた。
光を握って 笑っていた。
「ぼくはね、絵を描きたい
空がしゃべるような絵を、世界にとどけたいんだ」
まわりの人は 笑ったり 首をかしげたり。
けれどその子は、まっすぐ前を見ていた。
「大丈夫 きっと、できる」
そう言って、毎日 空を見上げた。
べつのところに、夢を持たぬ子がいた。
光は、心の奥で 眠っていた。
「なにが好きか わからない」
「やりたいことが 見つからない」
手ぶらで歩くその子は、
ときどき 胸が ぽっかりして、
風がふいても 気づかない。
でも、その目は とても静かで、
世界を じっと 見つめていた。
ある日、夢を持つ子と 夢を持たぬ子が出会った。
「きみは、なにか 夢がある?」
「……わからない。きみは?」
「ぼくはね、空を描きたいんだ」
夢を持たぬ子は しばらく考えて、
ぽつりと こう言った。
「いいね
わたし、空を見るのが すきだったかも」
そのとき
小さな、小さな 光が、
胸の奥で ふわりとゆれた。
夢は、持つものだけのものじゃない。
まだ見えない人にも、
眠っている人にも、
いつか届く。
それは
誰かの声だったり、
夕焼けの色だったり、
静かな出会いだったり。
夢は、
心がそっと うなずくとき、
ぽっと灯るものだから。
夢を持つ子は、今日も空を見ている。
夢を持たぬ子は、
「わたしも、なにか 見つけたい」と思いながら、
新しい靴をはいて 歩き出した。
ふたりの心の中に
ほら、
ちいさなちいさな光が、
静かに 息をしている。
夢があっても なくても、
きみは きみ。
そして、きっと、
だれの中にも
夢のかけらが
そっと 生まれている。
