ねえ、しってる?
春のはじまり、まだ風が冷たいころ
道ばたの草むらに、
ちいさな ちいさな 紫の花が咲くんだよ。
名前はね
「カラスノエンドウ」
みんなに踏まれても
見向きもされなくても
わたしは、ここにいるよって
そっと花びらをひらくんだ。
ちいさなアリが、葉っぱの上でおしゃべりしてる。
風がふくたび、わたしの茎がやさしくゆれる。
あ、いま 子どもが駆けてきた。
「ねえ、この花、豆ができてるよ!」って笑った。
そう、わたしはやがて
ちいさな実をつけるの。
つやつやの黒いまめ。
カラスが見つけて、ついばむときもあるから
「カラスノエンドウ」って呼ばれてるのよ。
わたしは 目立たない。
だれかにプレゼントされることもない。
だけどね、
春をしずかに告げることができる。
草むらの子どもたちと
虫たちと
風と
光と
いっしょに笑って生きてる。
だから
きみがもし、
さみしくて立ち止まる日があったら
地面を見てごらん。
わたし、咲いているかもしれないよ。
わたしはちいさいけれど、
ここにいるって、
ちゃんと春を生きているよって、
伝えたくて咲いてるから。
