ある日、子狐は言いました。

「きょうは おさんぽに いこう!」

しっぽをふりふり、

森の小道を かけていきました。

ちょうちょが ひらひら。

すずめが ちゅんちゅん。

子狐は にこにこ。

「おさんぽって たのしいな!」

やがて、道のむこうに

ひろいひろい「はたけ」が 見えました。

「いってみよう!」

でもそのあいだに

「ぶぅぅぅん!」

黒い道を 車が走っていました。

子狐は、森をぬけて、

はじめて見る黒い道に出ました。

「わぁ、ひろいなぁ。

むこうには きれいな花がさいてる!」

子狐は、わくわくして、

道のむこうへ行きたくなりました。

そのときです。

「ぶぅぅぅぅん!!!」

ゴォォォォォ!

風を切ってはしる車がやってきました。

子狐は びっくり。

でも、車がどんなに速いかを、まだ知りません。

「いまなら いける!」

子狐はトコトコ、道へ足をふみだしました。

その瞬間

「キィィィィィーーーッ!」

タイヤが悲鳴をあげます。

車は一生けんめい止まろうとしました。

でも、あまりにも速すぎて

間に合いませんでした。

ゴトンッ……

小さな子狐は、その場にころん。

車の中の人も、びっくりして、顔をおさえました。

「ごめんよ…! ごめんよ…!」

子狐は 知らなかったのです。

車がどんなに はやくて、

どんなに こわいものかを。

森の木々は、しん…と黙り込みました。

小鳥も、ちょうちょも、飛ぶのをやめました

森の風が そっと なでました。

「ちいさな いのち、さようなら…」

すずめも ちょうちょも しずかにうたいます。

楽しかったおさんぽは、

かなしい おわりになってしまいました。

子狐が 静かに 眠ったあと、

森じゅうが しんと 静まりました。

やがて、

すずめたちが 子狐のまわりに集まってきました。

「ぴぴぴ… もう あそべないの?」

ちょうちょが ひらひら舞いおり、

子狐のしっぽに やさしくとまりました。

小川のせせらぎが、

子守うたのように 流れます。

「おやすみ… おやすみ…」

森のみんなが、

子狐を 大切な仲間として

心のなかで 見送りました。

そして、空のかなたから

金色の光が 差しこみました。

それは、まるで

「子狐の魂が 光になって 旅立つ」

そんなふうに見えました。

森はまた、

やさしい風と 鳥の歌で

静かに満ちていきます。

けれど、みんなは忘れません。

「道は あぶない」

「いのちは ひとつだけ」

子狐のおさんぽは、

悲しいけれど、大切なことを教えてくれたのです。

(最後に伝える言葉)

もし きみが 道をわたるときは、

とびだしたら だめだよ。

だから、「道をわたるときは、かならずとまって、よく見てね」

車は おおきくて、はやくて、

とまれないときがあるから。

子狐のことを わすれないで。

いのちは ひとつ。

とても、とても たいせつなんだ。