薄明 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

薄明


あなたの 
足音の近づくとき
胸のざわつきは…

汀の小波のように 穏やかでなく
桜のさんざめきのような 賑やかさもない

もっとこう 汗ばむような緊張があり
どんな顔をしていようか…という動揺がある

あなたは
罪作りだと思うけれど
わたしはもはや そんな感情を
顔に出したりしないのだ

何かの 甘やかな言葉の括りにも
ましてしないのよ

傷つくことに慣れ重ね…
時のきざはしは 容易に登れやしなかったから
また傷つくことは もはや死に値するかも
 
大人顔してやり過ごすけれど
やはり動揺は隠せない
成熟度具合は まだまだか

そうして あなたの
足音が遠ざかるときの
貧血に近い 寒々しさが全てを物語るとき

もはや わたしにとって
はるかに尊い人に
あなたはなってしまったのだといい聞かせる

それらを無理に 胸深く落とし込んだら
楽園と奈落が わたしの中に出来上がる
境界をはっきり見せることなく
楽園と奈落は あくまでも
ゆらゆらと わたしの中で
妖しく 現れ
決めていた制御のタガが外れる

もう…いいや…どうでも…







避難用に危なくない 明かりを探していました。
でも 蝋燭をどうしても求めてしまいます。
ひとり取り残されてもいい。生の火と 水と土と
木が欲しい。

穢落としの 火なるや 清げなる水や
 扱い難きが 力溢るる