夢落ち | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

夢落ち


らしくない季節に
らしくないわたしは
戸惑っている

冷たい風は吹いているけど
少し動けば 汗ばんできて
ヨーロッパのどこかじゃまだ海水浴を楽しんで
いるって…
もう12月だってのに…

燃え尽きるのかしら
この星…
以前 見た夢みたいに

夢の中で
知らないどこかの迷子の
恐怖に怯える子どもを
大丈夫よって抱きしめていた
抱きしめながら
金色に沸騰した海を見ていた
街で一番高い塔の上から
海は荒れながら 畝り乍ら
金色の飛沫を跳ねている
湯気を上げて…
ああ…沸騰している…

見上げた空も金色
眩いくらいの大きな太陽…
暑くて息が出来なくて
日陰に折り重なる人々…
日陰はどこ?日陰は?

だけど…綺麗だと思ったの
この星が多分息を引き取る日の夢は
この上なく美しく
崇高だった
全て金色に染まっていた

蒼なんて…青なんて… 
そんな涼しげなもの…
空にも 海にも
どこにも無かった…
眩くて 熱くて 無感情…
ひたすら真っ直ぐに明るい金色

ほんとうの光の中で…
人は生きては行かれないんだと
その夢を見て初めて悟った

人は多少陰や闇が無ければ
燃え尽きてしまうのだ…
人は弱い…反して…

純粋なる光は
それほどに強いのだ

その夢を今も忘れていない…
最高に畏怖して
無力を感じて
闇を愛おしく思った…

単なる夢よ…夢だからね…
夢落ちかよ?って笑ってくれていいの
怖い夢の何処か得体のしれない
なんだかやたら現実的な夢だったってだけ

この夢…実はウサギが 数年前に見て映像を忘れられずにいるのです。
夢ですが、あまりにリアリティに富んでいて
熱も 匂いも夢で感じていました

怖いのに目を離せなかった、極彩色の夢です。