恋に堕ちた 瓜子姫 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー恋に堕ちた 瓜子姫ー

君が わたしを置いてゆくなら
星も月も太陽も
二度と昇らぬと言われた方が
いったいどれほど楽だろう

瓜子姫を高木に縛り上げ
隠れてしまった 君は
天邪鬼

どんなに泣こうが 叫ぼうが
誰の耳にも届かぬ枝で
わたしはひとり朽ち果てて
鴉の餌になるのだろう…

影を落とした歪な骨が
清らかな白になるほどに
骨という骨が繋ぎを解いて
縄を滑り落ちるまで

君を慕うと言う縄を
滑り落ちてしまうなら
身は解き放たれてゆくけれど
心は高木に縫われたままで
なんとしょう…
なんとしょう…

消えてしまった意地悪な
天邪鬼な君の戻るのを
ぶら下げられて 待つより他に
逃れる術を思いつかない

薄情者の天邪鬼…
恨みますよ 天邪鬼…

君を慕っておりましたのに

鴉瓜が木の枝で 照り映えながら
泣いている 
夕陽に向かって泣いている

鴉瓜の橙色は緋を纏い
  恨みと愛の合間に熟るる