晩鐘 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー句ー

少しづつ澄み渡りけり秋の鐘

ー晩鐘ー

繰り返す切ない調べは
寄せては返す波に似ている
寄せては返す哀しみが
止まることない涙となって
渇くいとまも与えない
虚ろな瞳を作りあげる

夏の終わりに生まれた花が
今ほろほろと溢れ始めて
熱に焼かれた砂埃に
静かに覆いを掛けてゆく
それは傷口に手を重ねる
君の優しき手当のようだ

それもつかの間
やがて大地に白きもの降り
花や木の葉の後に 降り
すべて眠りに着く時が訪れ
寄せては返す波のように
終わらぬ 調べを繰り返す

ただ メビウスの輪の中に
わたしはどこかで 決断をして
ピリオドという名の星を穿ち
ひとり流星になろうと思う

人は孤独 今は誰といたとしても
やがて さよならと手を振る
笑いながら
泣きながら

ひとり また ひとり 宵の流星
闇から光ある中へ 生まれて
やがて 光尽きて行き もとの闇へと
繰り返す これも 調べ

そうして安堵した顔で流星になり
消え去りぬ…
消え去りぬ…

ーうたー

出口無きメビウスの輪を離れ
  流れる星のひとつとなりぬ