或る朝 去る人に | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー或る朝 去る人にー




言の葉を 落としつくして去る人の

   うしろ姿の 滲んでゆくか・・・



少しだけ 山頭火
愛すべき人の去る間際
有名過ぎる俳人を真似て
言葉に尽くせぬ寂しきを
呟いてみる 囁いてみる

引き留めることの出来ぬ無作法
わたしには それほど魅力はない
君よ 逝くなと言ったとしても・・・

いえいえ 出逢いは やがて別るる
それを約束すればこそ

目の醒めるごとき 新鮮と
心震える 感動を抱くのだろうか
知るのだろうか・・・

君はすばらしき存在
数多の星より
海中の真珠より
土中の金より

なんで涙を流さずに
君を見送らずにいられよう・・・

わたしの人生の大きな陽だまり 大輪の花
そして いつの日も重厚な教科書

芳しき香りを漂わせ
品よき所作で わたしを手招き
指差すひとつひとつまで
ああ 優雅で 涙溢れたもの・・・

君のようになりたい
誰かのようになりたい 
いつまでも 習いを辞めてはいけないこと
いつまでも 謙虚であることを
わたしは 君から覚えた・・・

君は叱ることなど一度もなく
ただ いつも微笑み
好奇心の塊たれと 微笑み 頬笑み・・・
それが なまなかに真似できない


師はいつか去りて個といふひとりきり




笑み湛え指差す君を盗み見て

 わがあくがれは とほくまぶしき