ふたりの意味 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー句ー

今少しひぐらし啼くを乞う日暮

ーふたりの意味ー

変わろうとしているのに 
どこかで 足踏みをしているわたしは
きっと あなたに呼びとめられたいからなのよ・・・

頑張って 這いつくばって
生きるほかには あなたになんと応えればよかった?

あなたの 棲む世界と
わたしの 棲む世界が
あまりに遠く 違い過ぎて
ただ ただ 悲しかったの・・・

あなたの棲む場所へ 行きたかったわ・・・

鏡の中のわたし自身に
何度も言い聞かせたのよ
いい加減 忘れよう・・・と

どこかで 捻じれた運命の糸
解く術をもたないふたり
流れる時の 川を流され
対の岸辺で 向かい逢い
伸ばして届かぬ指先に 悔しいくちびるを噛み締めた

それでも わたしはよかったんだ
あなたは わたしに気付いてくれて
わたしは あなたに気づけたんだから・・・

これでふたりは 忘れることは
きっと二度とは無いでしょう

この世で一番の残酷を免れたわ
忘れるという残酷は無い・・・それは幸い

きっとそれこそが 唯一 宝で
ふたりの出逢いのほんとうの意味

向かいの岸辺のあなたに手を振る
いつまでも いつまでも いつまでも
忘れない・・・と

とびきりの わたしの持てるとびきりの
笑顔でもって 笑顔を浮かべて

だから あなたも 微笑んでいてね・・・

ーうたー

往く川の先を見やりて君も吾も
分かつ岸辺に立つと気づきぬ