夜光虫 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー句ー
赤潮の蓋取り除き海かはる

ー夜光虫ー

夏の終わりは やはり海辺で
この夏を迎えた日と同じように
今度は 目を細めることなく
瞬きもせず 波間に揺れる
夜光虫を見つめていましょう

波間に揺れる青紫は
夏の間にはしゃぎまわって
知らぬ間に出来た打身のような色だね
それも勲章みたいな
日焼けした肌には 良く似合う

緩やかに三日月が
空を滑ってゆくね…
港で舟は眠っていても
月だけは滑って…
夏の大三角形が あゝ角度を異にして
やがて見え無くなるのでしょう

あなたは 何を見つけたかな?
あなたは 何を失ったかな?

何かを失わなければ 得られない事
際立つ程にわかる夏に
わたしは わたしを見失い
やがて 新しい わたしに会った

御機嫌よう さよならと
また 会うことの叶わぬわたしへ
ささやかなレクイエム

古いわたしをそれなりに
わたしは愛していたことを
あなたはどうか どうか 覚えていて…
そして 秋に訪れる 少しだけ違う顔の
わたしをまた 愛して下さいますか?

成長は止まない 幾つ年を取っても
同じわたしは いないことを
あなたは 許してくれますか?

ーうたー

夜光虫の波間にあはくゆさゆさと
おもひでふたぎやがてきへ征く

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