びわ 261
こんなことがあった。
これも学生時代のことである。
一年の夏休みにアルバイトをした。
新宿伊勢丹の、お中元の配送である。
ぼくらは伊勢丹の近くの倉庫で、デパートから
まわってくる伝票に基づき、商品を包装し、配送
するのである。
ぼくの担当は油だった。夏だから油は暇と思ったが
意外にも忙しかった。
配送先は映画俳優や、なんと出身高校の校長まで
あった。
仕事場は、もちろん冷房もなく、それでもバテズに働
いた。
ある日、仕事で親しくなったN君が美味い天麩羅やが
あるから行かないか、と誘われ云った。
新宿駅の近くのビルの三階だった。店の名は忘れた。
仕事で疲れていたので、少々甘いタレが美味しかった。
食べ終わり、勘定を払う段になって、お互いが勘違いし
ていることに気づいた。
二人の持ち金は、合わせて150円だった。一人ぶんの
勘定にも不足する。
ぼくは、あわてて配送の事務所に駆け込んだ。