門松 57
掃き初やかゝれとてしも雪催ひ 久保田 万太郎
明日は仕事に行かなければなりません。北島町と云うところに
行きます。またしても中古住宅ですが、中古住宅を主体に販売し
ているのでいたし方がありませんが、こういたし方がないという言
葉を使用すると、なにやらぼくが、気の進まない仕事をいやいや
しているような物言いですが、さにあらず。ありがたく仕事をさして
いただいております。ちょっとした言葉使いのミスといわざるを得
ません。
一月も半ばを過ぎれば、そろそろお客さんも出てくるはずなんで
すが、ぼくの担当の現場には、今だ、お客さんは出現いたしており
ません。売れるか、あるいは売れないかは、営業の腕というよりも、
たぶんに運に左右されがちです。ながいこと営業をしていると、一
日三本も売れることもあります。しかしこんなことは稀で、三ヶ月も
まったく売れないときもあります。待つ商売ですから、お客さんが
現れないと打つ手がないのです。因果な商売と言えば、そうです
が、ぼくは気に入っています。なによりも時間がたっぷりあるので、
読書が思う存分できますし、車の中は、狭いながらも、ぼくの研究
室です。即刻役立つ実学は、ぼくが与するものではありませんが、
それでも、あれこれ、例えば弁証法とか帰納法、演繹法を駆使し
てさまざまな現象や事象を推し量ってみると、思わぬ結論が得ら
れることがあり、な~んだ、こんな簡単なことなのかと、あきれ返
ることがあります。真実は、あるいは神は、細部に宿る、と言うこ
とです。