野良猫 859
六月や昼寝のあとの青世界 森 澄雄
何か一つ、一つでいいから好きなものがあれば生きていかれる。
こう思っている。生きると言うことは切ないもんだ。苦しくもある。そ
したまた、はなはだ退屈なものである。そんなとき絶望に襲われる。
でも、何か一つでいいから好きなものが有れば生きていかれる。そ
れは犬かもしれない。木かもしれない。星かもしれない。あの人か
もしれない。モーッアルトかもしれない。お酒かもしれない。桂文楽
かもしれない。ビートルズかもしれない。形のない、そう神かもしれ
ない。石ころかもしれない。家族かもしてない。アンパンかもしれな
い。一枚の絵かもしれない。とにかく好きなもの、興味のあるものが
一つあれば、なんとか生きるよすがになる。生きるということは、そ
んなあいまいな、そしてたよりない、寒さに震える一本の木のような
感じがしないわけではない。
今日は、なんとなく買い物に行く。そして北島の図書館に本を返却
にいかねばならない。お歳暮の沢庵の樽を、さる人にもって行こう。
お昼は何を食べようか。さざなみのうどんにしようか。岸岡のラーメン
も捨てがたい。ほか弁も悪くないな。お好みやも久しく食べていない。
年末だから、なにか日頃たべれないような豪華なものを食べてみた
い。ステーキを食べようか。ホテルのランチもいいな。ふぐちりなんて
どうらろう。かにも食べたい。
どうやらぼくは、絶望しないで、しばらく生きていけそうである。