野良猫 858
梅を噛む少年の耳透きとほる 西東 三鬼
時々、家族なんかいないほうがいいと思うことがある。なんど
注意をしても聞かなかったり、ぼくが大事にしていた物を、無断
で捨てられたりすることがある。
家族というのは、勿論一人ではなく、当然、集団ということにな
る。集団というのは、楽しいこともあるが、いやなこともある、の
は当たり前だ。家族といっても価値観は、当然違う。食べ物の好
き嫌いも異なる。家族でも嫌なやつもいる。
ぼくの知人で、小学校の校長をしていた奴がいて、詳しいこと
を知らぬが、ある日帰宅して、妻と長女に、この家と土地は、お
まへたち二人にやるから、おれは出て行く、はい、さようならと
言って家を出たらしい。そして、小さなマンションを買って気まま
に暮らしているようなのである。
彼と家族の間になにがあったのか、詳細は解しかねるが、およ
その推測はつく。これは、どちらがいいとか、はたまた悪いとはい
えない話である。家族のそれぞれが我慢もし、しかし、時には言
葉が過ぎたこともあったろう。昔は、相思相愛の男女のなかも、愛
情が強ければ強いほど、それに反して憎しみも強くなる定理があ
るようで、大恋愛をした夫婦に限って、派手な喧嘩にあけくれ、離
別にいたるようだ。感情の落差が大きいのであろうか。
どちらにしても、家族の愛憎の確執は地獄である。解決は離別
のみだろうか。