野良猫 800
枯木がひかる わたしの中の風と雪 富澤 赤黄男
いつもは朝、家をでるまえに、今夜の食事を決める慣わしになっ
ているのだが、今朝に限って決めなかったのか、どうしても思出だ
せない。決めなかったのか、それとも失念したのかも判然としない
状態におちいり、これにはこまった。
車の中で熟慮してみたが、いい案もおもいうかばない。
ふと、座席の座布団の下から白いものが見えるので、引っ張り出
してみたら、吉野家の株主優待券であった。そうそう以前から、家の
ものが、吉野家の牛丼を食べてみたいといってたことを思い出した。
そこでなにくわぬ顔で、家に電話をして、今夜は牛丼にするぞ、と
いって電話を切った。
たいしたことないと云えば、そうなんであるが、人間の生活たるや、
こうした、たいしたことがない集積といえまいか。人生はこうして過ぎ
てゆくのである。
毎日、はらはらどきどきの生活などという経験がありません。しかし
どうなんでしょうか。面白いのかな。くたびれるようにも思いますが、
ぼくには、生憎想像がつきません。平凡な生活、退屈な生活。それ
に満足はしませんが、こんな生活を送れないのだからしかたがあり
ません。しかたがないという生き方も、ぼくは肯定いたします。しかし
また、しかたがないと諦める生き方は嫌だという思想も尊重したいと
思います。では