花火 516
ぼくが子供の頃、夏休みは毎日、吉野川に泳ぎに
行ったが、もうだいぶ以前から、吉野川で子供たちが
泳いでいるのを見かけなくなった。あれは学校が禁止
しているのだろうか。それとも元建設省(現在の国土
交通省)やらが禁止しているのであろうか。いずれに
しても子供達にとっては迷惑な話である。小水が混ざ
っている汚いプールなどより、川のほうがはるかに面
白いのにバカな話である。
夏休みになるころ、いつの間にか、家の中に、沢山
のスイカがごろごろしており、おそらくは近隣の農家が
売りに来たのを、買ったのであろうが、なぜかその農
家の人の姿を一度として見かけなかった。
したがって、毎日、スイカをいやになるほど食べたも
のだ。当時は、スイカの皮が糠漬けに最適である、こ
とをしらず、近所の農家の豚の餌になったが、後年、ス
イカの皮の糠漬けが、キュウリやナスビの糠漬けを上
回ると耳にし、何事も試してみるのが、ぼくの特質なの
で、試みてみたが、なんともなじまず、我が家の食卓の
メニューにはならなかった。
それから数年経過した夏の日、スイカを食べ終わり、
その皮を眺めるうちに、ふと、スイカの皮の糠漬けを思
い出し、もう一度試してみようと、皮の青いところを削り
落とし、赤い実を取り除け、糠床に二三日寝かしてみた
ら、えもいわれぬ美味で、キュウリの漬物より食感がよ
く、なぜ、あの時不味いと思ったか理解しがたいことだっ
た。
以来、夏が来れば、スイカの実を食べるより、皮の糠
漬けを食するために、スイカを購入するのが我が家の
食習慣になったのである。