_ 鞠と猫 326
ぼくは酒をのむ。十七歳から飲んでいる。何でも飲む。
ウイスキーを初め、ビール、日本酒、ワイン、焼酎が主で、
ときにバーボン、ジン、紹興酒、ウオッカを飲むこともあるが
いまだ二軍及び三軍である。
初めて飲んだのは恵比寿の友人の下宿で飲んだ日本酒
であった。初めてだったので飲める酒量が分からず、必然に
飲みすぎ、へべれけに酔いとんだ失態を行ってしまった。トイ
レ行くのに足腰がしびれて歩行困難になり友人の手を煩わし
てしまった。後で恥ずかしくて赤面した。だが記憶は鮮明であ
った。今まで記憶がとんだ経験はない。
ぼくは酔えばいいので、銘柄にはこだわらない。確かにウ
イスキーなどは明確に高級といわれる高価なウイスキーが香
りもよく美味いが、酔えばいいので低価なウイスキーでことは
たりる。学生の頃はレッドで、今は角ないしだるまだ。ビール
は開高健や山口瞳の顔を立ててサントリーだ。焼酎は薩摩白
波と大衆的で、日本酒はおでんとか鍋のときにしか飲まな
い。しかし、酒の肴の選択は難しいが、日本酒ほど包容力
のある酒はない。極端な話、肴なにも無くとも味噌一つまみ、
あるいはひとさし指をなめなめ飲んでも有効である。銘柄は
何でもいい。日本酒ほど味の良し悪しの選別が困難なもの
はない。ようするに酔えばいいのだ。酒の効用はそれだけ
だ。ねーちゃん熱燗もう一本、いや二本、三本、じゃんじゃ
んもってこい。