_ 春と修羅 318
長く生きていると気持ちが萎えることもある。それは
仕方がないことだと言わざるを得ないようだ。そんな場
合何らかのよすががあれば救われるかもしれない。ぼ
くの場合は本とか音楽、そして映画なんかがその役割
を果たしているようだが、朝起きて今日は何をしようか、
と思案したとき、瞬時に、そうだあの本を読まねばなら
ぬと閃いたときなどは、気力がめらめらと湧き上がり一
日が楽しく生きられる感じがするが、そうでないときは
はなはだあいまいな心持の一日になってしまう。それで
もなんとなく生きてはいけるのだが、そんな日はあきら
かに退屈な、恐ろしく長いだけの一日に終始してしまう
ようになる。だからぼくの場合翌日読む本の選定に注
意を払わねばならない。以前に書いたように、ぼくは同
時に平行して十冊ほどの本を常時読んでいるが、全て
喜び勇んで読んでいるのにあらず、時には我慢しいしい
読んでいる本も有るのだ。そんな本でもそのうち面白くな
ることもあるし、ついに砂を噛むごとくに終始した本もある。
そんなに毎日々々面白いことが続くわけではない。さぁ、
今日はシートン動物記だ。この本は再読だが期待を裏切ら
ないことは間違いない。