_ 阿弥陀仏と菫 266
断腸亭日乗は、いわずと知れた日記であると同時に、
日本人のみならず人類にとっても貴重な芸実的遺産であ
る。
日記は1917年(大正6年)9月16日より、荷風の死
の前日1959年(昭和34年)4月29日まで書かれたもの
で、風俗、自然、草花、時事、女性、株、お金、遊郭、文芸、
友人、と多岐に渡り、おもに東京の下町、隅田川や深川、
浅草、玉の井あたりが克明に描かれているもので、世間を
ながめる荷風の目は、おおむね冷笑的である。変人の名の
面目躍如である。
荷風にはさまざまなエピソードがあるが、なかでも吝嗇は
つとに有名で、いつもかばんに全財産を入れて手放さなかっ
た。死後残された財産は、預金が二千三百三十四万四千九
百七十四円。現金は三十一万円だった。現在の価格に換算
すると30倍と少なめに計算してもおよそ七億である。
ぼくが持っている断腸亭日常は岩波文庫であるが。県立
図書館でみた岩波の荷風全集には、異な点がページに時々
打たれている。これが何かととりざたされたが、歳を経るごと
に数がへっているので、アレだなぁと想像させる。イヒヒ。