_ 阿弥陀仏と菫 226
もう一本書いてしまおう。書けるときに書いてしまおう。
書けるときに書かねば、必ず書けなくなる日が到来する
ことは必定である。でももう乾いた手ぬぐいで一滴のしず
くもありもしない。
それはいっものことで、いまさら断る必要もないが、こ
うだらだらと認めているうちに紙面を埋めてしまおうと言う
魂胆は、賢明なる諸兄諸嬢におおかれましては御見抜き
のことと推察いたしまする。
既に半分は埋まった。後半分は何を書こうか。
東京で在住の折、帰省の折はほとんど新幹線だったが、
時折、急行列車の銀河2号という夜行列車で帰ることがあっ
た。たしか午後22時ごろに発車する大阪行きで、いまは走
っていないが、明朝の午前7時過ぎに大阪へ着くジーゼル機
関車である。
その日列車は空席が殊のほかおおかったが、ぼくの前に
妙齢な女性が座った。胸の襟に裁の字のバッチがあったの
で、ぼくは長い無聊を慰めるため、話しかけた。どこか洋裁の
学校へ行かれてるのですか?
紙面が尽きた。乞うご期待まで。