突破者 16
パソコンを購入しなければこおいう事態にはならなか
った。
実にぼくは、ものぐさな人間で横のモノを立てにする
ことさえ厭う性格で、部屋の中は、さながら坂口安吾のご
としなのである。有名な安吾の部屋の写真をはじめて見
たとき、安吾の本を読まぬうちにシンパシーを感じた。部
屋の散らかりようはぼくの比ではなかった。作家たる者か
くなる状態で仕事に励むべきというお手本のような有様で
あった。
およそ部屋のありさまは安吾の部屋にちと及ばないが、
さも似たり、である。
あっ、出だしのセンテンスにつづかねば意味がとうらぬ。
ようするに、ひねもすキーボードをたたくはめに陥らなくてよ
かったのにとつづけかったのである。日本国中でぼくみたい
な、ごくろうさん野郎がたくさんいるに違いない。何かを手に
入れるとは、そのまま何かを失うことでもある。ぼくが失った
ものたは何だろうか。おそらく自由ではなかろうか。だとする
と、ぼくは強制によりパソコンを使用しているのだろうか。も
ちろんぼく自身の意志である。でも違うんだ。ぼく自身の意
志にもかかわらず、変な義務感がともなう気分なんだ。時
々逃げ出したい思いにかられるのであるが、どうも逃げれ
ない。この心中をわかっていただけるであろうか。ぼくはブ
ログの遊戯を手に入れたことにより、いささかの自由を喪失
した感じがしてしまうのである。