突破者 15
人間は一人では生きていけない。それは物理的にも
精神的にもいえることである。沢山の人が群れても、バ
ラバラであるならば共同体としての社会を創り得ない事
は自明である。社会を創るには共通の価値観、つまり物
語が必要になる。それが宗教の始まりである。そのこと
により社会が出来、秩序が生まれた。
人間の自我そのものが物語なのである。自己が誰と
誰との間に生まれ、家庭や社会から学習し男女に、そし
て大人に育ち、労働をし、結婚して家庭を持ち、やがて老
いて死に、死後の物語も必要になる。輪廻なんていう素敵
な死後の物語もある。
科学なんてものが生まれてきて、どうやら宗教の物語
の嘘がわかってくるにつれ、思想イデオロギーという物語
が幅を利かすようになってくる。それぞれのイデオロギー
が我こそは普遍性をもつ科学的真理だ、とのたまい喧しく
争い、いがみ合うが、さて普遍性をもつイデオロギーなん
てあるのか。本人がおれが一番だと言っているだけでは
ないのか。どうやらおれが正義だとか、普遍性や科学を名
のる宗教やイデオロギーにはキオつけねばならぬ。むしろ
親鸞ではないが、自己のなかの悪に思いをはせる宗教や
思想に、ぼくはシンパシーを感ずる。