独り言    5月29日 | はなのブログ

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         隅田川    9

 随分昔になるが、ほとんど京都に何も感心もなく、また

知識すらもちあわせなきころ、それでも東京の行き帰り

に京都を通過するとき、いやでも目に入る建物があった。

それが五重塔である。東京タワーがそうであるように、そ

の建物を見るにつけなんともその俗物的存在に、なにや

安手のお土産のごときありさまにおもいへきへきとした

記憶があるのだが、無知と言うのは恐ろしいものである。

それが東寺の由緒ある建物であることを知ったのは最近

のことである。

 現存の塔婆中で最高の高さを誇る五重塔は、正保元年

(1644)に徳川家光によって再建されたものだ。その威容

は、いまも京のシンボルたるに恥じない、のだそうだがいや

はやである。なにがいやはやかといえば、聖なるものと俗

るものは紙一重なることを思い知らされたことである。

 おびただしいハトが境内にいこう。今もまた、心からの安

らぎを常にもちうるほどに平らかな時代を希求すれども、い

つの世も人心は揺れ動き、そのさまを塔は見つめていたの

であろうか。しだいに増えてゆく想い出のおちこちを、蝶のよ

にとりとめもなく飛び回りながら生きながらえていく人々に、

塔はなにを語ろうとしているのだろうか。