隅田川 8
東大谷。親鸞聖人の遺骨を安置した祖廟をもつ。東山
の山ふところにだかれた閑静な場所だ。円山公園の東南
にあたるけれど、公園のざわめきはここには遠い。いかに
も先祖の霊を眠らしめるにふさわしい。ことさらに陰影に富
むわけではなく、明るく透明すぎるわけでもない。
八坂神社の南門をくぐると。すぐに東大谷の参道である。
高速道路なみの広々とした道は、石だたみの整然としたす
がすがしさだ。その左右に植わった、クス、イチョウ、ケヤキ
の枝が参道のなかばまで張り出して、緑のトンネルをつく
る。かすかに、緑がにおう。あくまでゆっくりと、正面の唐門
に目をやりながら、登っていく。
唐門をくぐって寺内にはいる。茶所の前に群れているハト。
散り残った紅葉が、秋日の日ざしに映えて光る。静かな午
後だ。本堂から低く読経の声が流れる。安らいだ穏やかな
気配が、さして広くはない境内に満ちている。
鐘楼のわきに祖廟の拝門にいたる石段が伸びている。し
っとりとした情趣にどこか西洋風のにおいがないでもない。
それが、いかにも日本的なやわらかい陰影とないまぜにさ
れて、床しい。出しゃばらない美しさである。