独り言   5月27日 | はなのブログ

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         隅田川     7

 太秦の広隆寺は、秦氏の氏寺である。

 広隆寺というとすぐに思い出されるのは美しい弥勒で

ある。推古帝の御代、新羅から伝来したといわれる半

跏思惟像だが、細身の姿の清らかさ。内心の喜悦をほ

のかなほほえみにつつんだ表情のなごみ。そのなぞめ

た微笑は、東洋のモナリザとの呼び名もある。昭和

26年6月、第一号の国宝に指定された。

 その弥勒菩薩の名をさらに喧伝せしめたのは、京大

生による接吻事件である。昭和35年8月18日、看視人

のスキをねらって弥勒菩薩に頬ずりしようとした京大生

がいた。そのはずみで、やわらかく折りまげられている

菩薩の右手くすり指が折れた。犯人はまもなく自首、指

も巧みに修理されて、事件は落着したが、美意識という

ものを介在させた犯罪だけに、注視を集めたのである。

 広隆寺は、三条通に南面しているだけに、車の騒音や

排気ガスが遠慮会釈なくはいりこんでくる。そればかりか、

境内を通り抜ける車が、後を絶たない。うららかな日ざし

に土けむりが舞って、どことなく荒廃したすさみが、心を

痛めさせる。

 自在に群れ飛ぶハト。日なたぼっこする母と子、屈託

のない昼下がりの広隆寺である。