隅田川 3
ひょんなことから、以前から探していた本が見つか
った。どこで見つけたといえば、勿論わが家において
である。
ぼくちんの家はそれほどの大邸宅かといえば、否と
いわざるを得ない。どこにでもあるフツーの40坪ばか
りの家である。しかるに、このようにな行方不明の本が
何十冊ばかりあるのだ。それらの本等を見つけ出すの
は至難の技で、偶然に出てくるのを待つしかない。
見つかった本は、京都の文学地図という書名で、京都
新聞社編、文芸春秋刊なのである。たしか徳島の古本
屋で見つけ購入したものだ。
古本屋の書だなで見つけ、取り出して、本をぺらぺらと
めくると、梶井基次郎の活字が目に飛び込んだ。おやっと
思い、もしか、と期待した。やはり的中であった。以前から
檸檬の果物店を見たいと思っていたのであるが、果たして
願いがかなった。店頭に並べられた蜜柑だろうか、手に取
ろうとしている、おばちゃんが写った写真が掲載されている。
寺町通とある。おばちゃんの後ろを時代がかったセダンが
走っているので、ずいぶん古い写真である。店の名は八百
夘と書いてある。北朝の御所の近くのようだ、一度行ってみ
たい。そして、チューブからしぼり立ての絵具のような檸檬を
一個買って、丸善へ行き、美術全集を積み上げ、そのうえ
に檸檬をおいて帰ってくるのだ。
ええっ、丸善なくなっているの、もうっー。この檸檬どうしよ
うか。何かいいアイデアはありませんやろか、どうどすえ?