祇園と干し柿 12
食事の後ほどぼんやりして眠たくなるのは、ぼくだ
けではあるまい。天下泰平世はなべてこともなし、胃
袋を満たすと脳まで満たされて極楽とんぼ状態、いや
さお富ひさしぶりだなあー、なんておどけてみたい衝動
にかられるが、妻の怖い顔を想像するとへろへろと萎
えてしまう。いたしかたなし、ただ耐えるのみ。
秋はさんまだけど、まだ食べてません。あぶったあっ
あっのまるまるとしたさんまにたっぷりとスダチを絞って
醤油で食べるのが最高。勿論あったかいごはんとなすび
のお漬物なんかがあればもっと食が進むのは当然である。
食べ物の話ばかりで恐縮でありますが、さらに食べ物の
話を続けますれば、昨日、ぼくの好物の柿をどなたさまか
らいただきまして食しました。柿はまず姿がいい。檸檬の
ように気障じゃなく、桃のようにセクシーでもない、りんごの
ように純情でなく、苺のようにキュートでもない、梨のよう
に朴訥でもなく、西瓜のように派手でもなく、みかんのように
つつましくもない、栗のように頑固でもなく、うりのように地味
でなく、メロンのように高級でもなく、ぶどうのように騒がしくで
もない、ちょっと朱色がさした柿の実の、田舎娘然とした屈
託のない微笑に、ぼくは心うばわれたのだった。