祇園と干し柿 10
仕事の後の夕食は美味い。今夜は久しぶりのカレー
ライスだった。大きめに切ったじゃが芋、人参、タマネギ、
そして牛肉、平凡なものだがうまい、でもまずいカレーっ
てあるかなァ。家のカレーライスはほぼあまねく美味い。
これは不思議なことだ。どうしてだろう。
つい二週間ほど前には、クーラーを使っていたのに、今
では長袖のシャツが恋しく必要である。季節の境目をまた
いでしまったらしいのだが、一向に自覚がない。何月何日
午前あるいは午後、何時何分そして何秒にまたいだのか
を知る術はないのだろうか。知ってどうするという訳などあ
りはしないけれど、なんとなく知りたいという知識欲がぼくを
うながすのであるが、そんなこと知るもんか、ぼくの内なる
欲望といえど、そんなわがままに答えている暇はぼくには
ない。言い方を替えばぼくは知らないのである。しかし、知
らない、と言えない事情というものがある場合があるかもし
れない。要するに、知らないということがシャクにさわるの
である。例えぼくの内在から湧き上がった知識欲であって
も、ぼくは頑として受け付けない。これがぼくのプライドなの
である。今はすっかりひなびてしまい、しかも傷だらけであ
るが、かってはびんびんであった。ひいひい言わせた。過
ぎた時を忍んでもせんなきことと思えども、あァ邯鄲が夢
のたとえもあるぞ。あらためてわびしきことよ。