祇園と干し柿 4
毎日がどきどきするような具合だったら、どんなに
いいかな、なんて空想したりすることが時折あるけど、
それはかなわぬことで、むしがよすぎることだ。ほとん
ど毎日は平凡で退屈なしろもの、こころよいどきどき
なんて皆無である。
そういえば、賭け事にあんなに夢中になるのは、お
金を得ると言うよりもそのどきどきをあじわいたいが
ためかもしれない。くわえて恋とか、あるいはけしから
ぬ浮気なんかにもエモイワレヌそのどきどき感がある
模様、人間の営みから無くなるわけはないさ。
民俗学は不案内だが、たしかハレとケなる概念があ
った、と脳漿が主張するのであるが、これなども人間の
社会生活がいかに厄介なものであるか、いやそれゆえ
に無聊を慰めるために演劇、舞踊、歌などが発達した
ものと思はれる。もうしおくれたが、ハレは祭儀などの非
日常的なもので、ケは日常そのものである。ハレという
節目があるがゆえに、ながい日常の退屈に絶えていけ
るのである。しかるがゆえに、恋とか、浮気、賭け事、あ
るいは芸術一般すらハレなる概念のうちなる人間の仕業
と言わざるを得ない。あァ、ぼくのハレは何処に。