驟雨と毬 17
おはようごんすけ。いやはや寒うござるのう、おのうの
がた。こんな調子で最後まで書こうと思ったけれど、言
葉を知らないので無理と断念した。
今、坪内逍遥訳のハムレットを読んでいるのだが、これ
が傑作で、一行ごとに笑いが禁じ得ないしろものなので
ある。なぜならば、翻訳の言葉が時代劇調になっていて、
とてもデンマークの世界と思えず、およそ江戸時代を彷
彿としてしまうしまっなのである。笑いながら読みつつも、
異国の話を日本語に訳する苦労をしのび、先人たちの
努力に頭が下がった。
今でこそ福田恆存や小田島の名訳でシェクスピアを読
んだ方が多いのでしょうが、時には先人の苦労のあとを
味わってみるのもいかがでしょうか。さながら忠臣蔵のよ
うなハムレットで、微苦笑と涙なくして読めません。これは
けっして坪内逍遥を揶揄しているにあらず。言葉は変化し
ているので、翻訳に限らず文章は時間を経るとどうしても
古臭くなるのは致し方ないが、かえってぼくなどはこの古
い文章がたまらなく美味で、棄てておくにもったいなくて、
適切に使用できているかどうかは自信のほどはないが、
厚顔無恥にも利用させていただいている。いとおかし、や
んぬるかな、如何。