独り言   4月12日 | はなのブログ

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        驟雨と毬  3

 無人島へ行くに、一冊だけ本を許されるなら何を

もっていくか?なるつまらない質問があるが、ぼくな

らさしずめ永井荷風の断腸亭日乗を持参したい、と

所望するであろう。あまたある本の中でこれほど面

白き本はない。賢明なる皆様においてはすでに読ま

れいるかたたもおおいであろうが、あえてぼくが推奨

するほどにこの本には愛着がある。

 すでにご存じの方は多いと思われるが、荷風ほど

偏屈で意地の悪い男はいない。遠くから眺めるぶん

にはいいが、ちかくでお付き合いするのはゴメンで

ある。しかし、かくなるゆえに日記が面白いのである。

平凡な生真面目な人の日記などつまらぬ、奇人であ

るがゆえに日記が光をはなつのである。

 ぼくが所有している本は岩波文庫であるが、同じく

岩波書店の荷風全集の断腸亭日乗は不思議な点が

書かれている。すでに荷風フアンならずともご存じの

かたがたもいられるのであろうが、これがなんである

かはあえてぼくは言わない。調べればすぐにわかる

のでどうぞしらべてください。荷風老人のいたずらとで

も解釈してください。

 小説とはなにかは、ぼくは荷風から学んだ。高邁な

哲学や、深甚な宗教的信念を持ち込むのではなく、ひ

たすらに人間を描く。生きている人間を描く。これのみ

である。荷風のばあい女である。腕くらべの駒代、つゆ

のあとさきの君江、など単に綺麗だけでなく、悩み苦し

み、しかも魅力的に生きていくさまが描かれている、い

いものは古くならないの法則は、未だ健在である。