驟雨と毬 2
ついこの間の今時分は、近くの八幡様でお盆の阿波
踊りが繰り広げられ、喧騒とお囃子に、キイボードをた
たくぼくの指も三拍子でかろやかな指使いだったが、今
夜は道を走る車の音もまばらで、いよいよ秋の気配が
濃くなるのがしみじみ心根に染み渡るあんばいである。
仕事もこれからが佳境であり、暑き折りはお客様も少
ないのだが、季節が過ごし良くなれば三三五五ちらり
ほらりとお客様が現われ始める。
仕事もそうだけど、涼しくなれば眠くなる。ことに食事
のあとの昼寝は至福の時で、どんな美女をもってしても
昼寝の時間には代えがたい。欲も得もないただひたす
らに睡魔に心を奪われさながら桃源郷に遊ぶがごとし。
わずか30分の昼寝に人生の喜び、ないしは満足を心
おきなく味わうのである。そのいわば30分で活力倍増
イチローがユンケルを飲むがごとし。お客様絵の応対
もいつにもまして軽やかに、滑舌満開、笑顔でにこにこ、
お客さん買いなはれ、お金のことはことはどうにかなる、
はよ買わなほかの人に買われてしまいまっせ。お子さ
んたちも喜んでる、ほらほら自分の部屋を決めている
がな、もう決まりだ。決断しなはれ、男だっしゃろ。手付
は明日で結構だ。さあこの契約書にハンつきなはれ、ほ
いきまりだ、この家はあんたらのモン、今日から住みな
はれ。社長売れました。