独り言   3月22日 | はなのブログ

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         鰻と犬   2

 今は昔、台風一過を一家と勘違いをして、そう言う

アウトローの組があるのかと思ったことがあったが、

これは向田邦子の野中の薔薇を、夜中の薔薇と聞

き違いしたことに比べ、はなはだ叙情性に欠けるき

らいがある。そのへんがぼくと向田女史との、おなじ

間違いにしても才能の相違を物語るエピソードであ

る。

 ぼくは向田邦子が大好きで、彼女の作品のほとん

どをよんでいると思うが、とりわけ思い出トランプの

かわうそがお気に入りで、彼女の文章の秘密が知

りたくて何度もノートに書き写した。

 指先から煙草が落ちたのは、月曜の夕方だった。

で始まるかわうそはこの一行で、読者の心をわしづ

かみにしてしまう。ごぞんじのように向田邦子の世界

はホームドラマなので、普通の家庭におきる出来事

しかおきない。正義の味方も悪漢もでてきないし、殺

人もバイオレンスもない。ただ平凡に生きている人々

が誰でも経験することばかりであるが、それを読者が

飽きないように物語を描いているのは、向田邦子の技

である。

 向田邦子はぼくより随分年上であるが、いい女である。

たまたま同時代に生まれたのに、一度もあえないなんて、

彼女の早世を思うと、かえすがえすも無念の感慨にとらわ

れてしまう。ほんまじょ。