流転と啓示 20
当時の学者達は、原因と結果は常に一方通行、つ
まり原因→結果であるべきで、相互に影響を与え合う
循環論、原因→結果・結果→原因など学説として認め
る訳にはいかないと考えたのだ。マルクスの循環論が
正しいと証明したのはサムエルソンと、労働価値説を
数学的に証明した森嶋通夫である。
今、経済学の世界でマルクスを語る人は皆無に近
い。だが、マルクスが後世に遺した思想、業績は現在
の経済社会を見つめ、問題の真髄を探る上で多くの
示唆を与えて呉れる。
マックス・ヴェーバーは資本主義を歴史的、根本的
に研究・分析するという大仕事を成し遂げた人物であ
る。資本主義の萌芽に決定的に不足していたもの、
必要不可欠なもの。それは資本主義の精神である、
とヴェーバーは指摘する。では資本主義の精神とは
何か。それは、①労働そのものを目的とし、救済の手
段として尊重する精神、②目的合理的な精神、③利
子・利潤を倫理的に正当化する精神、である。労働そ
のものを目的とし、救済の手段として尊重する精神と
は、つまり報酬や昇進のために働いているのではな
い、という事である。働く事自体に価値を見出し、喜び
を感じる精神。自らの職業を天職と捉え、行動的禁欲
を以て労働に邁進し伝統主義を打ち破ろうとする精神
こそが近代資本主義の形成には不可欠だった。つづく