流転と啓示 19
マルクスはリカードの学説を継承したが、大事な
点を忘れていた。リカードは、資本主義より前の経
済では労働価値説は成り立つが、複雑な迂回生産
のある資本主義経済においては成り立たないと書
いている。しかし、マルクス労働価値説は剰余価値
理論の前提なる物であり、リカードとは違って労働
価値説を捨て去るわけにはゆかない。
マルクスは資本主義下では必ず失業が発生する、
という産業予備軍説に依って、失業の存在を証明し
た。又、カルクスは資本主義は貧富の差を拡げ、特
に失業者は筆舌に尽くし難い悲惨な状況に追い込ま
れる、とも指摘している。いずれの点においても、マ
ルクスの言が正しいかった。
それを如実に物語っているのが、1929年からの
世界恐慌だ。だが、マルクスの指摘が現実のものに
なったにも拘わらず、経済学者も誰もマルクスの事
は見向きもしなかった。後に社会主義国を生むなど、
マルクスの思想は世界の歴史をも動かしたというの
に、経済学の世界からは永久追放されて終った。そ
の理由がマルクスの循環論である。
労働価値説において労働時間は市場価値を決める、
ものである筈である。その労働時間の実質的な価値が
市場で決まる、とは全く説明になっていない。 つづく