流転と啓示 5
市場を自由にしておけば、総べて上手くいく、失
業は出ないと言う古典派の主張を、本当の意味で
批判したのはマルクスとケインズである。
マルクスは、自由市場経済の上に築かれる資本
主義は貧富の格差を生むと批判し、ケインズは、
抑々セイの法則を前提としている処に落とし穴があ
り、資本主義下では失業の発生が避けられない場
合もある事を指摘した。
この200年で世界は大きく変わった。生産技術も、
経済活動の規模も、人々の生活も、世界地図も塗り
替えられた。なのに何故、古典派の理論は生き生き
と今を語る事ができるのか。その凄さ、真価を理解す
るためにも、古典派の思想的背景を掘り下げてみよ
う。
最大多数の最大幸福を追求する事の正当性を最初
に語ったのは、スミスより年下のベンサムであった。英
国功利主義の元祖である。ベンサムは言う。人間は将
来の欲求を見越して行動できるだけではない。その効
用、将来に亙る幸福の度合いも正確に計算できるのだ
と。この幸福計算に基づいて最大多数の最大幸福を実
現できるよう、市場は徹底して自由放任するべきだ、と
いうのがベンサムの主張である。 つづく